道尾秀介さん「貘の檻」 [本☆☆]
道尾さんらしい重苦しい圧迫感を覚えるミステリです。
1年前に離婚した大槇辰男は、息子・俊也との面会の帰り、かつて故郷のO村に住んでいた曾木美禰子を駅で見かける。32年前、父に殺されたはずの女が、なぜ――。だが次の瞬間、彼女は電車に撥ねられ、命を落とす。辰男は俊也を連れてO村を訪れることを決意。しかしその夜、最初の悪夢が……。薬物、写真、地下水路。昏い迷宮を彷徨い辿り着く、驚愕のラスト。道尾史上最驚の長編ミステリー!
(出版社HPより)
信州の寒村と因習・習俗、過去の惨劇が伏流となって現在によみがえる展開は横溝正史を彷彿とさせますが、血腥い猟奇殺人にならないところが道尾さんテイストです。
心臓病の薬として医者から大量にせしめた薬が中毒をもたらし、辰男が見る悪夢が現実との境目を曖昧にして、物語に混沌をもたらします。さらにO村の方言が異邦感を際立たせます。
このくだりが非常におもしろいです。道尾さんの筆力ゆえでしょう。
単なるミステリではなく、小説としての面白さを堪能しました。
ただ、終盤の「息抜き穴」を探すくだりはややご都合主義に感じました。
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