北村薫さん「太宰治の辞書」 [本☆]
「円紫さんと私」シリーズです。あれから幾年月…。
「花火」「女生徒」「太宰治の辞書」「白い朝」「一年後の『太宰治の辞書』」「二つの『現代日本小説大系』」の6編が収録されています。
新潮文庫の復刻版に「ピエルロチ」の名を見つけた《私》。たちまち連想が連想を呼ぶ。ロチの作品『日本印象記』、芥川龍之介の「舞踏会」、「舞踏会」を評する江藤淳と三島由紀夫。本から本へ、《私》の探求はとどまるところを知らない。太宰治「女生徒」を読んで創案と借用のあわいを往き来し、太宰愛用の辞書は何だったのかと遠方に足を延ばす。そのゆくたてに耳を傾けてくれる噺家、春桜亭円紫師匠。そう、やはり私は「円紫さんのおかげで、本の旅が続けられる」のだ……。
(出版社HPより)
結婚し、母となり、編集者としてのキャリアを積んだ「私」は歳をとっても旺盛な好奇心を失いません。
しかし、主人公で語り手の「私」の知的探検という色合いの強い作品で、かなりの部分を名著の引用で占められています。
日常の謎を解くには日々の生活の慌ただしさが邪魔をするのでしょうか。
「白い朝」は円紫さんとおぼしき少年が登場する短編です。
「一年後の『太宰治の辞書』」と「二つの『現代日本小説大系』」は読んでみて初めてエッセイとわかる非常に不親切なラインナップです。
これを「円紫さんと私」シリーズと呼べるのかどうか。そもそも小説と呼べるのかどうか。
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