平谷美樹さん「エリ・エリ」 [本☆☆]
第1回小松左京賞受賞作です。近未来SFですが、どちらかというと「神は存在するか」に重点が置かれた作品です。
二十一世紀に入って、人類はかつてない精神的・科学的進歩の時代を迎えていた。人々は非論理的なものを排除したが、それは既存の“神”の否定でもあった。“神”に代わる超越者を求めて人類は、〈ホメロス計画〉による地球外知的生命体との接触を試みていたが、この計画は存続の危機を迎えていた教会にとっても「神の科学的証明」による信仰の回復の可能性を秘めたものであったのだ。しかし一方で、計画の反対勢力による陰謀が極秘裏に、だが着実に進行していた。こうした情勢下、地球外知的生命体からのものと思われる大量のニュートリノが観測され、事態は急展開を見せはじめるのだった……。人類と神、神と宇宙との関係に鋭く迫る、一大宇宙SFの幕が今、上がる! (第一回小松左京賞受賞作品)
(出版社HPより)
表題の「エリ・エリ」はイエスが磔刑に処せられた際に十字架上で叫んだという「エリ エリ レマ サバクタニ(我が神、我が神、どうして私をお見捨てになったのですか)」からきているそうです。
活動範囲を月、火星、木星と拡げていった人類は既存の「神」に代わる超越者を求めるようになり、探査計画を立てます。
神の存在を疑うことでアルコールに溺れるようになった神父、〈ホメロス計画〉を主導する科学者、宇宙人にチップを埋め込まれたと妄想する精神科医が主な役どころでそれぞれの立場で探査計画に関わっていきます。
更にはローマ法王、アメリカ大統領なども登場します。
「神の存在」というテーマを据えたSF小説は読み応えがあります。
ただ、21世紀中頃という近未来の話なのに「これじゃない」感があります。
妙にアナログチックというか、やたらと人手を介しているというか。
2005年発売だからか、十数年という年月の差を差し引いてもSFらしい想像力豊かな世界を見せてほしかったです。
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