伊坂幸太郎さん「火星に住むつもりかい?」 [本☆]
伊坂さんだから、期待値が高くなってしまうんですが、これは…。
「安全地区」に指定された仙台を取り締まる「平和警察」。その管理下、住人の監視と密告によって「危険人物」と認められた者は、衆人環視の中で刑に処されてしまう。不条理渦巻く世界で窮地に陥った人々を救うのは、全身黒ずくめの「正義の味方」、ただ一人。ディストピアに迸るユーモアとアイロニー。伊坂ワールドの醍醐味が余すところなく詰め込まれたジャンルの枠を超越する傑作!
(出版社HPより)
ディストピア小説です。しかし、現代はこの作品で描かれた世界よりも先を行っているように思います。それも、巧妙に。
「正義」とはなにかを考えさせられました。
国家にとっての正義、個人の抱く正義、大衆にとっての正義。それは重なることはあっても決してイコールではないはずです。
物語では「平和警察」が悪で、無実の罪を着せられそうになる人々を救う「正義の味方」が正ではありますが、「水戸黄門」のように勧善懲悪とはいきません。(そもそも「水戸黄門」が権力者側だ)
そこにこの作品の皮肉と絶望があるように思います。
ページが多く、長い割にはカタルシスは得られず、拷問の場面は苦痛だし、今いる世界と作品世界が陸続きだと気づいた暗澹さで暗ーくなりました。
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