垣根涼介さん「室町無頼」 [本☆☆]
室町時代末期、応仁の乱より少し前に起こった土一揆を描いた歴史小説です。
思っていた物語と違った。。。
応仁の乱前夜、富める者の勝手し放題でかつてなく飢える者に溢れ返った京の都。ならず者の頭目ながら骨皮道賢は権力側に食い込んで市中警護役を任され、浮浪の徒・蓮田兵衛は、ひとり生き残った用心棒を兵法者に仕立てようとし、近江の古老に預けた。兵衛は飢民を糾合し、日本史に悪名を刻む企てを画策していた……。史実に基づく歴史巨篇。
(出版社HPより)
階層が固定され、格差や貧富の差が拡大している時代背景は現代と通じるものがあるかもしれません。それだけに動乱の時代を若い才蔵がどうやって生き抜いていくのかという興味があったのですが、後半から物語は期待と違ったものになりました。
道賢のように300人の極道者を手下に伏見稲荷大社を根城にして室町幕府から京の警護を請け負いながらもとある企みを持ちます。
一方の兵衛は百姓や牢人たちとコネクションを持ちながらネットワークを築き、一揆を起こします。
結局、タイトルにある「無頼」に込められた意味をどう読み取るかだと思いました。
一揆で関所や裕福な商家を襲い、略奪と証文の破棄を指揮し、幕府側と対峙する兵衛ですが、最終的になにを目指していたのかがわかりませんでした。体制転覆を狙っていたのか、下剋上の世の引き金を引いただけなのか。
兵衛や道賢、才蔵に棒術を教え込む唐崎の老人、敵役の僧兵の曉信、芳王子など才蔵を取り巻く大人たちが魅力的に描かれています。
垣根さんがインタビューで「真の社会変革はアウトサイダーにしか出来ない」と言っていますが、そのまま現代日本に置き換えることが可能かどうか、については考えてしまいます。
コメント 0