上田早夕里さん「夢みる葦笛」 [本☆☆]
SF短編集ですが、ホラーあり、ファンタジーあり、宇宙開発用人工知性などガチガチのSFとバラエティ豊かな作品が並んでいます。どれもレベルの高いものばかりです。
「夢みる葦笛」「眼神」「完全なる脳髄」「石繭」「氷波」「滑車の地」「プテロス」「楽園(パラディスス)」「上海フランス租界祁斉路三二〇号」「アステロイド・ツリーの彼方へ」の10編が収められています。
ある日、街に現れたイソギンチャクのような頭を持つ奇妙な生物。不思議な曲を奏でるそれは、みるみる増殖していく。その美しい歌声は人々を魅了するが、一方で人間から大切な何かを奪い去ろうとしていた。(表題作) 人と人あらざるもの、呪術と科学、過去と未来。様々な境界上を自在に飛翔し、「人間とは何か」を問う。収録作すべてが並々ならぬ傑作! 奇跡の短篇集。
(出版社HPより)
それぞれが時間軸も世界観もテーマも違っていて、ページを繰るたびにガラッと変わります。それぞれ違った面白さがあります。
ただ、それが逆に短編集としてのカラーを感じなくさせているように思いました。作者の力量が逆に作用しているような。
なかでも「上海フランス租界祁斉路三二〇号」がお気に入りです。
上海租界を舞台にしたタイムパラドックスを交えた作品かと思いきや、タネ明かしをされて「そっちか」と唸ってしまいました。幻想的な灯籠のシーンは秀逸です。
長編でも読みたいと思わせる想像力を刺激される作品たちです。
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