米澤穂信さん「いまさら翼といわれても」 [本☆☆☆]
待ちに待った古典部シリーズ第6弾です。
前作『ふたりの距離の概算』から6年。キャラ設定もすっかり忘れていました。
「箱の中の欠落」「鏡には映らない」「連峰は晴れているか」「わたしたちの伝説の一冊」「長い休日」「いまさら翼といわれても」の6編が収められています。
「ちーちゃんの行きそうなところ、知らない?」夏休み初日、折木奉太郎にかかってきた〈古典部〉部員・伊原摩耶花からの電話。合唱祭の本番を前に、ソロパートを任されている千反田えるが姿を消したと言う。千反田は今、どんな思いでどこにいるのか――会場に駆けつけた奉太郎は推理を開始する。千反田の知られざる苦悩が垣間見える表題作ほか、〈古典部〉メンバーの過去と未来が垣間見える、瑞々しくもビターな全6篇。
(出版社HPより)
それぞれの作品で古典部の各部員にスポットライトが当たります。
高校生活の中で起こる謎解きに加えて奉太郎の過去(省エネをモットーに至った理由)にもスポットライトが当てられます。
特に表題作は秀逸だと思いました。
あの責任感の塊のような千反田がイベントの主役を前にして失踪してしまいます。
その理由と背景(完全に説明されたものではありませんが)はこのシリーズの転換点になるのかもしれません。
奉太郎たちも高校2年生。進路を考える時期にきていて(『わたしたちの伝説の一冊』はまさにそれ)、そういう意味合いを含んだ短編集だと思いました。
なんといっても古典部員4人(奉太郎、える、里志、摩耶花)のキャラクターが魅力的に描かれています。
摩耶花が奉太郎に抱いていた嫌悪感も誤解で、更には級友を救う行為だったことに対する敬意に変わる場面は胸が熱くなりました。(それに対して奉太郎が頬を赤くするシーンもいいです)
続編が楽しみです。
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