恩田陸さん「蜜蜂と遠雷」 [本☆☆]
いうなれば恩田陸さん版「のだめカンタービレ」です。クラシックの世界と魅力が余すところなく描かれています。
第156回直木賞と第14回本屋大賞のダブル受賞作です。
俺はまだ、神に愛されているだろうか?
ピアノコンクールを舞台に、人間の才能と運命、そして音楽を描き切った青春群像小説。
著者渾身、文句なしの最高傑作!
3年ごとに開催される芳ヶ江国際ピアノコンクール。「ここを制した者は世界最高峰のS国際ピアノコンクールで優勝する」ジンクスがあり近年、覇者である新たな才能の出現は音楽界の事件となっていた。
養蜂家の父とともに各地を転々とし自宅にピアノを持たない少年・風間塵16歳。かつて天才少女として国内外のジュニアコンクールを制覇しCDデビューもしながら13歳のときの母の突然の死去以来、長らくピアノが弾けなかった栄伝亜夜20歳。音大出身だが今は楽器店勤務のサラリーマンでコンクール年齢制限ギリギリの高島明石28歳。完璧な演奏技術と音楽性で優勝候補と目される名門ジュリアード音楽院のマサル・C・レヴィ=アナトール19歳。
彼ら以外にも数多の天才たちが繰り広げる競争という名の自らとの闘い。
第1次から3次予選そして本選を勝ち抜き優勝するのは誰なのか?
(出版社HPより)
恩田さんの「コンクールの初めから終わりまでを書きたい」という通り、1次予選から3次予選、そして本選までが延々と描かれます。
描写されるのはメインの4名ではあるのですが、演奏シーンから登場人物が得る曲の世界観やイメージ、昂る感情が多彩な筆致で描かれます。それらのシーンは飽きることがなく、恩田さんの筆力を感じます。
国際コンクールなのに主役の4人は日本人3名+日系人1人というのは仕方のないことなのでしょうか。
3人のタイプの異なる天才と1人の努力家のピアニストだけでなく、審査員やステージマネージャ(そんな役割の人がいることも知りました)や調律師といったコンクールに関わる人たち、栄伝亜夜を支える音大生といった様々な登場人物によって群像劇が描かれます。
途中、中だるみを覚えますが、それ以上に彼らの真摯なまでにクラシックに向き合う姿勢が作品に緊張感をもたらしてくれます。
ラストが呆気ない終わり方なのは力尽きたからなのか、紙面の都合なのか、それとも恩田さんらしさ(?)なのかはわかりませんが「クラシック小説」を堪能しました。
映画が公開されるようです。
キャストは松坂桃李さんに松岡茉優さん。後の2人は…すいません、よく知らないです。
音楽を小説に取り込んだものを更に映像表現する。小説の中の音楽に感じたものは表現されているのでしょうか。
https://mitsubachi-enrai-movie.jp/
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