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恩田陸さん「失われた地図」 [本☆]


失われた地図 (角川文庫)

失われた地図 (角川文庫)

  • 作者: 恩田 陸
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2019/08/23
  • メディア: 文庫



世界観など途中までは面白かったんですが、まあ、恩田陸さんらしいといえばらしい作品です。

「錦糸町コマンド」「川崎コンフィデンシャル」「上野ブラッディ」「大阪アンタッチャブル」「呉スクランブル」「横須賀バビロン」「六本木クライシス」の7編が収められています。

錦糸町、川崎、上野、大阪、呉、六本木・・・・・・。
日本各地の旧軍都に発生すると言われる「裂け目」。
かつてそこに生きた人々の記憶が形を成し、現代に蘇る。
鮎観の一族は代々、この「裂け目」を封じ、記憶の化身たちと戦う“力”を持っていた。
彼女と同じ一族の遼平もまた、同じ力を有した存在だった。
愛し合い結婚した二人だが、息子、俊平を産んだことから運命の歯車は狂いはじめ・・・・・・。
――新時代の到来は、闇か、光か。
(出版社HPより)

導入部はその世界観を含めてワクワクしました。
「裂け目」から湧き出る「グンカ」を遼平、鮎観、浩平の3人が得物を手に立ち回りするシーンは楽しく、最後は鮎観の放った「蝶」で「グンカ」を押し込めて「裂け目」を縫い合わせる結末は水戸黄門の印籠のようです。

旧軍部があった場所で起こる亀裂がなにを意味するのか、綴じなければどうなってしまうのか。
それは自然なことなのか、それとも誰かが仕組んだことなのか。
等々が明らかにされずに物語は展開します。

そこまでは面白かったです。恩田さんの想像力が横溢する世界観だと思いました。

けれど、続編が出そうな終わり方に、例えそうだとしても不親切な内容だと思いました。
いい風にいうと含みを持たせた。悪い風にいうと投げ出した。そんな印象です。

ナショナリズムの高揚に乗じて「裂け目」が生じるという設定がなにを意味するのか、「グンカ」に「軍靴」を連想してしまい、作家が時代に不穏な空気を感じ取っているのではと思いました。

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