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三崎亜記さん「チェーン・ピープル」 [本☆☆]


チェーン・ピープル (幻冬舎文庫)

チェーン・ピープル (幻冬舎文庫)

  • 作者: 三崎 亜記
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2019/10/09
  • メディア: 文庫



三崎亜記さんらしさが詰まった短編集です。
特異な設定の世界なのに現実世界に通じ、冷徹に描き揶揄する恐ろしい情景が潜んでいます。

「正義の味方-塗り替えられた「像」」「似叙伝-人の願いの境界線-」「チェーン・ピープル-画一化された「個性」」「ナナツコク-記憶の地図の行方-」「ぬまっチ-裸の道化師-」「応援-「頑張れ!」の呪縛-」の6編が収められています。

名前も年齢も住所もまったく違うのに、言動や身ごなし、癖に奇妙な共通点がある。彼らは「チェーン・ピープル」と呼ばれ、定められた人格「平田昌三マニュアル」に則り、日々、平田昌三的であることを目指し、自らを律しながら暮らしているのだ。『となり町戦争』の著者が描く、いまこの世界にある6つの危機の物語。
(出版社HPより)

一人のルポライターがテーマに沿って関係者にインタビューして考察を深めていくという形式になっています。

「正義の味方」は『となり町戦争』を思わせる三崎さんならではの世界が繰り広げられます。
突如として海から現れ町を破壊する巨大な「敵」と、それを阻止する「正義の味方」。日本人なら誰でも知っている特撮ヒーローなんですが、称賛で終わらないのがミソです。
「敵」の定義から所管する省庁のたらい回しから始まって、戦いの最中に「正義の味方」が破壊する損害額の算定が明らかになり、住民の手のひら返しでやがて「正義の味方」は…。

「ぬまっチ」は市非公認のゆるキャラなのに素の中年男、しかも愛想一つなく暴言を放つという異色すぎる設定に初めは笑っていたのですが、その裏に示唆されたある企みに表面だけでは窺い知れないものがあること、そのままを鵜呑みにしてはいけないという警告と捉えました。

「応援」はSNS時代ならではの匿名による悪意と巧妙さを描いた作品です。
誰もが思いがけずにそのターゲットになってしまう怖さがひしひしと伝わってきました。
それだけに終幕の安穏さがなにより代えがたいものに思えました。

三崎ワールドを堪能しました。

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