恩田陸さん「終りなき夜に生れつく」 [本☆☆☆]
『夜の底は柔らかな幻』のスピンオフ短編集です。
久々に恩田さんらしいファンタジー作品を読みました。
「砂の夜」「夜のふたつの貌」「夜間飛行」「終りなき夜に生れつく」の4編が収められています。
僕たちは、同じ種族だ。
永遠に終わらない夜を生きていく種族。
のちに何件もの大規模テロ事件を起こし、犯罪者たちの王として君臨する男、神山。
市民に紛れて生きていた彼を追う雑誌記者が見たものとは――。
強力な特殊能力を持って生まれてきた少年たちは、いかにして残虐な殺人者となったのか。
『夜の底は柔らかな幻』で凄絶な殺し合いを演じた男たちの過去が今、明らかになる。
(出版社HPより)
前作の登場人物が次作の主人公になる、チェーンストーリイになっています。
「イロ」と呼ばれる様々な超能力者「在色者」が多く生まれる途鎖(とさ)国で、軍勇司、葛城晃、神山倖秀がどのように青年期を迎え、現在に至ったのかが描かれています。
恩田さんらしい想像力にあふれていて、それでいて結末が唐突でないのは短編だからでしょうか。なぜ長編だと…(以下自粛)
『夜の底は柔らかな幻』では物語の進行上の必然的な大量の虐殺があったのですが、本作では控えめです。それが登場人物たちの置かれた世界における必然として物語を締める緊張感になっていると思いました。
なかでも表題作の「終りなき夜に生れつく」は好みの作品です。平凡なサラリーマンが人知れずなにかをしている。それを追う週刊誌記者。先の読めない不安さと得体の知れなさが物語を通じて伝わってきました。さすが恩田さん。
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