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千早茜さん「西洋菓子店プティ・フール」 [本☆☆☆]


西洋菓子店プティ・フール (文春文庫)

西洋菓子店プティ・フール (文春文庫)

  • 作者: 千早 茜
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2019/02/08
  • メディア: Kindle版



洋菓子店が舞台ということからポップで華やかな物語かと思ったら、真摯で静かで情熱的な連作短編集でした。

「グロゼイユ」「ヴァニーユ」「カラメル」「ロゼ」「ショコラ」「クレーム」の6編が収められています。

フランスで菓子作りを修業したパティシエールの亜樹は、菓子職人の祖父のもと、下町の西洋菓子店「プティ・フール」で働く。女ともだち、恋人、仕事仲間、そして店の常連客たち―店を訪れる人々が抱えるさまざまな事情と、それぞれの変化を描く連作短編集。巻末にパティシエール・岩柳麻子との対談を収録。
(「BOOK」データベースより)

菓子作りの場面描写とテクニックの数々に圧倒されます。きっと相当な取材と知識を重ねたんでしょう。しっかりとした下地のうえに人間模様というストーリイが出来上がっています。

主人公の亜樹が作る今風で「尖った」洋菓子と菓子職人の祖父の昔ながらの洋菓子━例えばシュークリームの皮の固さの違い━の対比と亜樹の彼氏をはじめとする常連客の反応から、亜樹の「気付き」と成長が描かれます。
それでも職人気質の二人の洋菓子に向かう姿勢は似た者同士というか、DNAを受け継いでいるというか。
なにより、そんな2人を見守り包みこむ「ばあちゃん」がいいです。

亜樹自身と恋人の祐介、パティスリー時代の後輩、常連客といった視点から描かれる作品は商店街のなかの洋菓子店、そこで働く菓子職人を立体的に作り上げていきます。

亜樹が主導してリフォームした西洋菓子店プティ・フールはどんな歴史を刻むのか、何年か後のお店を覗いてみたいと思いました。

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