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千早 茜さん「クローゼット」 [本☆☆]


クローゼット (新潮文庫)

クローゼット (新潮文庫)

  • 作者: 千早 茜
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2020/11/28
  • メディア: 文庫



補修士という仕事があるんですね。

十八世紀のコルセットやレース、バレンシアガのコートにディオールのドレスまで、約一万点が眠る服飾美術館。ここの洋服補修士の纏子(まきこ)は、幼い頃の事件で男性恐怖症を抱えている。一方、デパート店員の芳(かおる)も、男だけど女性服が好きというだけで傷ついた過去があった。デパートでの展示を機に出会った纏子と芳。でも二人を繋ぐ糸は遠い記憶の中にもあって……。洋服と、心の傷みに寄り添う物語。

『冷静と情熱のあいだ』では絵画の修復士という職業を知りましたが、歴史的な服を傷みから救う補修士という職業まっであるとは、世の中は知らないことだらけです。

芳、纏子、晶という性格の異なる3人の男女を中心として洋服を媒介にして物語が進みます。
また、彼らの周囲のベテラン補修士たちや老カメラマンが実にいい歳の取り方をしていて憧れます。

青柳服飾美術館に収蔵されている欧米を含む大量の歴史的な洋服の数々を背景にした膨大な知識や補修技量などが物語の中に溶け込むように必然性をもって語られるさまは千早さんの筆力や情熱を感じます。

芳の幼少期にクローゼットの中で見た光景が纏子との関係性を物語ることは容易に想像がついたのですが、実際に芳と纏子の過去と現在が繋がるシーンは胸が熱くなりました。

生きづらさを感ぜずにはいられない現代において、心の拠り所を見つけるヒントを得たようにも思いました。

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