SSブログ

柴崎友香さん「パノララ」 [本☆☆]


パノララ (講談社文庫)

パノララ (講談社文庫)

  • 作者: 柴崎 友香
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2018/01/16
  • メディア: 文庫



600ページ近いボリュームとともに、内容もそれまでの柴崎さんとは違う、登場人物の深みまで切り込むような作品です。
しかもSFチック。

28歳のわたし・田中真紀子は友人のイチローに誘われて、彼の家に間借りすることになった。けれどもその建物は、コンクリート三階建て・黄色い木造二階建て・鉄骨ガレージの3棟が無理矢理くっつけられた変な家。そしてわたしは、ガレージの上の赤い小屋に住むことに。全裸で現れる父親を筆頭に、個性派揃いのイチローの家族たち。ヘンテコな家でおかしな生活が始まった。そんなある日、イチローから「たまに同じ一日が二度繰り返される」という不思議な経験を打ち明けられる──芥川賞作家が描く未体験パノラマワールド!
(出版社HPより)

設定からして風変りです。
友人であるイチローの父親の思い付きで建て増し(というより継ぎはぎ)された奇妙な外観を持つ家。
家では全裸の父、女優の母、それぞれ父親が異なるという兄妹のイチロー、文、絵波。
平凡な主人公の田中真紀子(名前は平凡ではないですね)は彼らの家に間借りし、交流するのですが、次第に不可思議な現象を体験していきます。

残念ながらどの登場人物にも共感できませんでした。平凡すぎたり、キャラが濃すぎたり。

これまでの柴崎さんの作品にも出てきたようなクリエイターの卵(より以前の段階かも)たちも登場しますが、「背景」よりも「道具」感が強かったです。
彼らの「あり方」が触媒となっているように思いました。

様々な超常現象が出てくるのですが、その説明がなく不十分に感じました。その人の能力によるものだとしたら、終盤の怒涛の真紀子の経験はなんなのか、となるし、場所によるものでもなさそうだし。
モヤモヤしたものだけが残りました。

ただ、不器用で受け身な真紀子が彼らと交わるうちに次第に自分の意見を言うように変わっていく姿に柴崎さんのメッセージが込められているように感じました。

nice!(26)  コメント(0) 
共通テーマ:

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。