東野圭吾さん「虚ろな十字架」 [本☆☆]
刑罰とはなにか、贖罪とはなにかを考えさせられる重い作品です。それでいて、しっかりミステリです。
中原道正・小夜子夫妻は一人娘を殺害した犯人に死刑判決が出た後、離婚した。数年後、今度は小夜子が刺殺されるが、すぐに犯人・町村が出頭する。中原は、死刑を望む小夜子の両親の相談に乗るうち、彼女が犯罪被害者遺族の立場から死刑廃止反対を訴えていたと知る。一方、町村の娘婿である仁科史也は、離婚して町村たちと縁を切るよう母親から迫られていた――。
(出版社HPより)
再犯率の高さと、刑罰がどれだけ罪と向き合う効力を持っているのか。厳然たる事実に懲役刑が自らの犯した罪に向き合う(=更生)につながっていないという問題提起になっています。
一方で刑法のシステムが硬直化しているのではないかという警鐘も鳴らしています。
それだけに結末が、彼らの下した決断が本当に正しかったのか判断付きませんでした。
ただ、小夜子が殺されるきっかけになった行動については、同情はできますが、理解はできませんでした。
重いテーマとミステリの融合は見事です。