中山七里さん「ハーメルンの誘拐魔」 [本☆☆]
「刑事 犬飼隼人」シリーズ第3弾です。
社会派ミステリとして読み応えがあります。
病院からの帰り道、母親が目を離した隙に15歳の少女・香苗が消えた。現場には中世の伝承「ハーメルンの笛吹き男」の絵葉書が残されていた。警視庁捜査一課の犬養隼人が捜査に乗り出し、香苗が子宮頚がんワクチン接種の副作用によって記憶障害に陥っていたことが判明する。数日後、今度は女子高生・亜美が下校途中に行方不明になり、彼女の携帯電話と共に「笛吹き男」の絵葉書が発見された。亜美の父親は子宮頚がんワクチン勧奨団体の会長だった。ワクチンに関わる被害者と加害者家族がそれぞれ行方不明に。犯人像とその狙いが掴めないなか、さらに第三の事件が発生。ワクチン被害を国に訴えるために集まった少女5人が、マイクロバスごと消えてしまったのだ。その直後、捜査本部に届いた「笛吹き男」からの声明は、一人10億、合計70億円の身代金の要求だった…。
(出版社HPより)
子宮頸がんワクチン接種による副反応が第2の薬害エイズ事件と言われているそうです。
物語では厚労省と製薬会社と産婦人科学会の産学官による利益供与体制が根底にあって引き起こした事件でした。(現在は状況が変わっているようです)
薬害問題に比重がかかっているように思えました。ミステリ部分の構成、展開、伏線に物足りなさを感じました。
一癖ある犬養隼人の捜査に対してパートナーの高千穂明日香が感情的になるシーンが多々ありますが、実際にそんなに波風たてないでしょう、と思いながら読みました。
そうなるだけの理由も明らかにされず、疑問符がついたままでした。
どんでん返しのネタ━ハーメルンの誘拐魔の正体は早々に気付いてしまいました。動機も含めて。そこが残念です。
で、「ハーメルンの笛吹き男」は?