三上延さん「江ノ島西浦写真館」 [本☆☆]
『ビブリア古書堂の事件手帖』シリーズの三上さんの作品です。
写真館という、古書店にどこか通じるものがある店が舞台のミステリです。
江ノ島の路地の奥、ひっそりとした入り江に佇む「江ノ島西浦写真館」。百年間営業を続けたその写真館は、館主の死により幕を閉じた。過去のある出来事から写真家の夢を諦めていた孫の桂木繭は、祖母の遺品整理のため写真館を訪れる。そこには注文したまま誰も受け取りに来ない、どこか歪な「未渡し写真」の詰まった缶があった。繭は写真を受け取りに来た青年・真鳥と共に、写真の謎を解き、注文主に返していくが――。
写真に秘められた痛みや切なさを『ビブリア古書堂の事件手帖』の三上延が描く、ビターであたたかな青春ミステリ。
(出版社HPより)
桂木繭と永野琉衣を中心にした物語かと思ったら、違いました。
もちろん繭と琉衣の過去のいきさつと離れてしまった原因(繭がカメラから離れてしまった原因でもあります)から2人の関係を解きほぐす過程もありますが、むしろ未渡しの写真に隠された謎解きを真鳥秋孝とともに進めるミステリでした。
ミステリの謎解きはダークです。ダークなりに犯人(といえるか)に狂気か哀情がほしかったです。そのほうが盛り上がったのではないでしょうか。あっさりした結末だっただけに肩透かしをくらった印象でした。
また、繭をはじめとして登場人物たちの醜さが過去の過ちとともに描かれます。
けれども醜さが生み出した罪と繭が向き合って昇華したのかというとそこまで到達していなかったように思いました。