万城目学さん「バベル九朔」 [本☆]
壮大なのか、そうでないのか、よくわからないまま終わってしまった読後感が残りました。
ネバーエンディングストーリー。
カラス女、ヘンテコ店舗、夢の結末――雑居ビル管理人を最上階で待つものは。
全編ずっとビルのなか。
最狭(さいきょう)かつ最高の冒険譚!
俺は5階建ての雑居ビル「バベル九朔」の管理人をしながら作家を目指している。
巨大ネズミ出没、空き巣事件発生と騒がしい毎日のなか、ついに自信作の大長編を書き上げた。
だが、タイトル決めで悩む俺を、謎の“カラス女”が付け回す。
ビル内のテナントに逃げこんだ俺は、ある絵に触れた途端、見慣れた自分の部屋で目覚める――外には何故か遙か上へと続く階段と見知らぬテナント達が。
「バベル九朔」に隠された壮大な秘密とは?
(出版社HPより)
作家志望の主人公という自伝的要素のある生活感ある出だしは、「カラス女」の登場で一気に異世界へと吹き飛ばされます。
ただ、そこからが長かったです…。
5階建てなのにバベルという雑居ビルがバベルそのままに先の見えない高層雑居(?)ビルになり、ある仕掛けの施された店舗が続きます。
小ネタ満載でくすっとするのですが、延々と続くと飽きがくるというか。匙加減って大事ですね。
「カラス女」の目的、「バベル九朔」を建てた主人公の祖父の目論見などが明らかになり終幕を迎えるのですが、理解はできるもののわけがわからないという状態に陥ってしまいました。
万城目さんの作品に対する期待が高かっただけに残念に思ってしまいました。
パルコさんから株主優待品をいただきました 2019年秋 [株主優待]
ありがとうございます
お買い物券またはパルコ内映画館での映画鑑賞ができます。
どっちにしようかな~
お買い物券またはパルコ内映画館での映画鑑賞ができます。
どっちにしようかな~
吉田篤弘さん「レインコートを着た犬」 [本☆☆]
「月舟町」三部作の完結編です。語り手は犬のジャンゴです。
なぜ神様は犬に笑顔を授けてくれなかったのか―“月舟シネマ”の看板犬ジャンゴは、心密かに「笑う犬」を目指している。そんなジャンゴの思いをよそに、雨が町を濡らし、人に事件を運ぶ。小さな映画館と、十字路に立つ食堂を舞台に繰り広げられる雨と希望の物語。ゆるやかに呼応する“月舟町”シリーズ三部作の完結編。
(「BOOK」データベースより)
今作は月舟シネマで飼われている犬のジャンゴの視点で、飼い主で映画技師の直さんや映画館でパンを売る初美さん、お馴染みのデ・ニーロ親方、その他 月舟町の住人たちが登場します。
ただ、全体を通して思ったんですが、登場人物たちの影が薄いな。ジャンゴ視点という空間的な制約のせいでしょうか。
隣町にできたビストロやパン屋の人気を受けてつむじ風食堂や初美さんのパン屋の経営が立ち行かなくなります。月舟シネマや古本屋も青色吐息です。住人たちはどうやって切り抜けていくのか。
本名(?)はジャンゴなのに、「アンゴ」(横文字が苦手で覚えられない親方)とか「ゴン」(親方の奥さん)とかいろいろ呼ばれて混乱しないんでしょうか。
本多孝好さん「君の隣に」 [本☆☆]
社会派ミステリ小説です。
舞台も特異なら展開も特異、結末もこちらの予想を覆すものでした。よく練られたプロットです。
「scene1~アヤメ」「scene2~吉田」「scene3~星野」「scene4~満村」「scene5~坂巻」「scene6~豊」の章立てになっています。
横浜・伊勢佐木町で風俗店『ピーチドロップス』を営む大学生・早瀬俊。彼は進藤翼という少女と二人で暮らしていた。深い翳を宿す青年・早瀬と、非の打ち所がない少女・翼。店の常連客、翼の担任教師、老いた元警官など周囲の人物たちから、少しずつ早瀬と翼の秘密が明かされていく――。
(出版社HPより)
進藤渚と翼の母娘と早瀬俊、ジャンを中心としたデリヘル「ピーチドロップス」と、それに関わる人たちの視点で展開する連作短編集です。
「scene2~吉田」まではなにがなんだかわかりませんでした。次の星野の章でようやく概要がわかりかけてきて、そこから物語は一気に加速します。
坂巻の章でケリがついて、けれども後日談とするにはあやふやなままだな、と思っていたら最終章でどんでん返しが待っていました。
読み終わったときはただただ嘆息です。
ただ、早瀬たちがそこまで渚(と翼)のためにするのか、恩人であったとしても━彼らが感じる渚の魅力というものが伝わってきませんでした。
なので読後感としては当惑したままでした。
米澤穂信さん「王とサーカス」 [本☆☆]
太刀洗万智シリーズといっていいものでしょうか。
ミステリとは違うような…。
2001年、新聞社を辞めたばかりの太刀洗万智は、知人の雑誌編集者から海外旅行特集の仕事を受け、事前取材のためネパールに向かった。現地で知り合った少年にガイドを頼み、穏やかな時間を過ごそうとしていた矢先、王宮で国王をはじめとする王族殺害事件が勃発する。太刀洗はジャーナリストとして早速取材を開始したが、そんな彼女を嘲笑うかのように、彼女の前にはひとつの死体が転がり…。「この男は、わたしのために殺されたのか?あるいは―」疑問と苦悩の果てに、太刀洗が辿り着いた痛切な真実とは?『さよなら妖精』の出来事から十年の時を経て、太刀洗万智は異邦でふたたび、自らの人生をも左右するような大事件に遭遇する。2001年に実際に起きた王宮事件を取り込んで描いた壮大なフィクションにして、米澤ミステリの記念碑的傑作!
(「BOOK」データベースより)
2001年の「ネパール王族殺害事件」を下敷きにしたミステリ要素もありますが、それ以上にフリージャーナリストになった太刀洗万智の自分自身の在り方と矜持についての自問自答が描かれています。
むしろ、こっちのほうが主といってもいいかもしれません。
また、カトマンズの雑然とした様子や人々の暮らしぶりといったものが興味深く描かれます。
そして殺害された王族の葬儀から、やがて緊迫した町の空気感への変転する描写はさすがです。
途中で殺人犯についておおよその推測はつきました。
けれども、なぜ遺体を晒したかがわからず、終幕で示された回答で納得し、さらに真相が明らかにされ思わず唸ってしまいました。
再び太刀洗万智に会えるときを楽しみにしています。
キングジムさんから株主優待品をいただきました 2019年秋 [株主優待]
ありがとうございます
2,500円相当の文具セットです。
いろいろ使い道があります。
2,500円相当の文具セットです。
いろいろ使い道があります。
吉田篤弘さん「つむじ風食堂の夜 」 [本☆☆]
「月舟町」シリーズ第1弾です。
なんともいいようのない雰囲気を味わえます。
懐かしい町「月舟町」の十字路の角にある、ちょっと風変わりなつむじ風食堂。無口な店主、月舟アパートメントに住んでいる「雨降り先生」、古本屋の「デニーロの親方」、イルクーツクに行きたい果物屋主人、不思議な帽子屋・桜田さん、背の高い舞台女優・奈々津さん。食堂に集う人々が織りなす、懐かしくも清々しい物語。クラフト・エヴィング商會の物語作家による長編小説。
(「BOOK」データベースより)
どこかおとぎ話のような雰囲気の漂う「月舟町」と素朴な住人たちの物語はなんだか落ち着きます。
登場人物たちは生活感を感じさせないのですが、けれどもしっかりと職業を持って月舟町で暮らしていて、地に足をつけています。
なかでも主人公の雨降り先生はなんだか魅力的に感じます。
月舟アパートメントの屋根裏のような部屋に暮らし、人工降雨の研究をしながらもライターの仕事をしています。仕事のために必要な『唐辛子千夜一夜奇譚』を手に入れようとして古本屋の主人・デニーロの親方に口から出まかせの法外な値段を吹っ掛けられて月舟町を駆け回る破目になったりします。
舞台女優の奈々津との先行きも気になります。
思うに、月舟町の住人たちは裕福ではないですが、自由なんですね。生活に縛られている感じがしない。そこが魅力的に思えるのかもしれません。
月舟町の住人として暮らしてみたい、そう思わせる不思議な魅力の詰まった作品でした。
タンドリーチキンを作ってみました [料理]
家事ヤロウ!!!で紹介されていた魚焼きグリルを使ったタンドリーチキンを作ってみました。
https://www.tv-asahi.co.jp/kajiyarou/backnumber/0066/
カレー粉、塩、ケチャップ、ヨーグルトを混ぜ合わせ、フォークで穴を開けた鶏肉に揉みこみ、2時間おきます。
魚焼きグリルで皮目を下にして強火で8分、ひっくり返して7分焼いたら出来上がり!
胸肉を使ったら、盛り上がった部分が火に近くなって焦げてしまいました。
焼くときは平らにしましょう。
(焼き肉のタレに漬け込むと照り焼きチキンになります。これはこれで手軽で美味しいです)
https://www.tv-asahi.co.jp/kajiyarou/backnumber/0066/
カレー粉、塩、ケチャップ、ヨーグルトを混ぜ合わせ、フォークで穴を開けた鶏肉に揉みこみ、2時間おきます。
魚焼きグリルで皮目を下にして強火で8分、ひっくり返して7分焼いたら出来上がり!
胸肉を使ったら、盛り上がった部分が火に近くなって焦げてしまいました。
焼くときは平らにしましょう。
(焼き肉のタレに漬け込むと照り焼きチキンになります。これはこれで手軽で美味しいです)
樋口有介さん「亀と観覧車」 [本☆]
生まれも家庭環境も「わたしの責任」と受け入れる涼子は健気ですが、なんだかよくわからない展開と結末でした。
もともとは純文学を志していたという樋口さん、時々こういった作品を書きますね。
ホテルの清掃員として働きながら夜間高校に通う涼子、16歳。家には、怪我で働けなくなった父、鬱病になった母がいて、生活保護を受けている。ある日、クラスメイトからセレブばかりが集う「クラブ」に行かないかと誘われる。守らねばならないものなど何もなく、家にも帰りたくない。ちょっとだけ人生を変えてみようと足を踏み入れた「クラブ」には、小説家だという初老の男がいた。生きることを放棄しかけている親を受け入れ、人と関わらず生きる日々を夢見てきた涼子は、自らの人生に希望を見出すことができるのだろうか――。33万部超のヒットとなった『ピース』の著者が、原点に戻って描き上げた、一筋縄ではいかない一気読み「純愛」物語!
(「BOOK」データベースより)
初老の小説家の南馬という男は樋口さんをモチーフにしているそうです。
プロフィールとか、デビュー作の内容(「父親が刑事でカノジョの父親がヤクザ」)など頷けるものがありました。
62歳という年齢以上に先行きを悟った男の行動は揶揄できるものではありません。結末を読むまでは。
淡々と自分の置かれた環境を受け入れながらも、自尊心と人としての在り方を失わない涼子の姿は清々しいものがあります。
怠惰な両親との対比が一層そう思わせます。
そんな涼子が垣間見せた闇に思わず背筋が寒くなりました。
おとぎ話と捉えればいいのかもしれません。
ただ、おとぎ話のように「めでたしめでたし」で終わりそうにないその先と、けれども、外見からは想像もつかない涼子の「したたかさ」に期待してしまいます。
柴崎友香さん「きょうのできごと、十年後」 [本☆☆]
「きょうのできごと」の十年後を描いた作品です。
「きょうのできごと、十年後」と行定勲さんの短編小説「鴨川晴れ待ち」の2作が収められています。
十年前、京都で引っ越しパーティーに居合わせた男女。それぞれの時間を生き、つきあっていたカップルは別れ、変わったり変わらなかったりしながら30代になった彼らが、今夜再会する。中沢が鴨川沿いにオープンさせたバルに集まった面々に、今日もさまざまな「できごと」が起きる。行定勲監督が、なんと、紙上映画化した書き下ろし小説「鴨川晴れ待ち」を収録。
(「BOOK」データベースより)
日常の中の他愛ないのない出来事や柔らかい関西弁の会話を親密に切り取った『きょうのできごと』はある種衝撃でした。
その10年後を描いた作品は元恋人たちの再会をベースに当時の友人たちが集まり、京都の夜に他愛ないを繰り広げます。
それぞれが10年の間に公私ともに変化があり、それでいて変わらないところもあり、中でも仲間内の距離感は変わらなくて、物語としての「起承転結」があるわけでもないのですが、なぜだか心地いいです。
主人公は関西出身ですが、東京を舞台にした作品が増えている柴崎さんですが、やはり関西を舞台にした物語のほうが近しさを感じます。