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樋口有介さん「亀と観覧車」 [本☆]


亀と観覧車 (中公文庫)

亀と観覧車 (中公文庫)

  • 作者: 樋口 有介
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2018/08/21
  • メディア: 文庫



生まれも家庭環境も「わたしの責任」と受け入れる涼子は健気ですが、なんだかよくわからない展開と結末でした。
もともとは純文学を志していたという樋口さん、時々こういった作品を書きますね。

ホテルの清掃員として働きながら夜間高校に通う涼子、16歳。家には、怪我で働けなくなった父、鬱病になった母がいて、生活保護を受けている。ある日、クラスメイトからセレブばかりが集う「クラブ」に行かないかと誘われる。守らねばならないものなど何もなく、家にも帰りたくない。ちょっとだけ人生を変えてみようと足を踏み入れた「クラブ」には、小説家だという初老の男がいた。生きることを放棄しかけている親を受け入れ、人と関わらず生きる日々を夢見てきた涼子は、自らの人生に希望を見出すことができるのだろうか――。33万部超のヒットとなった『ピース』の著者が、原点に戻って描き上げた、一筋縄ではいかない一気読み「純愛」物語!
(「BOOK」データベースより)

初老の小説家の南馬という男は樋口さんをモチーフにしているそうです。
プロフィールとか、デビュー作の内容(「父親が刑事でカノジョの父親がヤクザ」)など頷けるものがありました。
62歳という年齢以上に先行きを悟った男の行動は揶揄できるものではありません。結末を読むまでは。

淡々と自分の置かれた環境を受け入れながらも、自尊心と人としての在り方を失わない涼子の姿は清々しいものがあります。
怠惰な両親との対比が一層そう思わせます。

そんな涼子が垣間見せた闇に思わず背筋が寒くなりました。

おとぎ話と捉えればいいのかもしれません。
ただ、おとぎ話のように「めでたしめでたし」で終わりそうにないその先と、けれども、外見からは想像もつかない涼子の「したたかさ」に期待してしまいます。

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