吉田修一さん「ウォーターゲーム」 [本☆☆☆]
鷹野一彦シリーズ第3弾です。えー、完結編?
考えるんだ。 たとえ1%でも、可能性があるなら。 晩秋の夜、突如ダムが決壊し、濁流が町を飲み込んだ。 死者97名、行方不明者50名を超える大惨事。 新聞記者の九条麻衣子は、被害を取材するうちに、決壊が事故ではなく大規模な犯罪である可能性に気づき、その夜に町を抜け出した土木作業員の男を探し始める。 一方その事件の陰で、AN通信の鷹野一彦とその部下・田岡は、ダム爆破計画を阻止するべく奔走していた。水道事業の民営化に金の匂いを嗅ぎ取った代議士や国内外の企業によるテロ計画の一部だったが、いつのまにか計画の全てが盗まれ、首謀者が正体不明の人物に入れ替わっていた!? 情報が錯綜し、混乱を極めるなか、九条麻衣子と若宮真司の出会いが、世間を揺るがす大スクープを生み出すことに……。 敵か味方か、嘘か真実か、善か悪か——!? 金の匂いに敏感な男女が、裏切りあい、騙し合いながら、真っ暗闇の“今"を駆け抜ける!
(出版社HPより)
事件のきっかけになった水道事業の民営化については実際に自治体で検討されているようですが、その是非はスルーして、利権とカネが絡んだ末に起こされる連続ダム爆破計画を阻止すべく鷹野と田岡はトム・クルーズばりのアクションを見せます。(ちょっと大げさ)
これぞエンタメというシーンでした。
この事件をきっかけにして主に環太平洋を駆け巡る取り引き、裏切り、駆け引きが展開されます。
一方で新聞記者がAN通信の実像を暴こうとするサイドストーリイが並行します。
風間、AYAKO、デイヴィッドという脇を固めるキャラクターも魅力的です。
なかでもAYAKOは敵なのか味方なのか、本心を悟られずに変幻自在に立ち位置を変えるさまが物語をかき回す役割をこなしています。
更にはテロ計画の首謀者の正体が明らかになるくだりでは、吉田さんのストーリイテラーぶりが発揮されたと思います。
シリーズ続編を希望します。