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森見登美彦さん「夜行」 [本☆☆☆]


夜行 (小学館文庫)

夜行 (小学館文庫)

  • 作者: 森見 登美彦
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2019/10/04
  • メディア: 文庫



森見さんらしい、けれども森見さんらしからぬ幻想的な作品です。
この世界観好きだなあ。

「尾道」「奥飛驒」「津軽」「天竜峡」「鞍馬」の5章立てになっています。

僕らは誰も彼女のことを忘れられなかった。
私たち六人は、京都で学生時代を過ごした仲間だった。十年前、鞍馬の火祭りを訪れた私たちの前から、長谷川さんは突然姿を消した。十年ぶりに鞍馬に集まったのは、おそらく皆、もう一度彼女に会いたかったからだ。夜が更けるなか、それぞれが旅先で出会った不思議な体験を語り出す。私たちは全員、岸田道生という画家が描いた「夜行」という絵と出会っていた。
旅の夜の怪談に、青春小説、ファンタジーの要素を織り込んだ最高傑作!
「夜はどこにでも通じているの。世界はつねに夜なのよ」
(出版社HPより)

夜は短し歩けよ乙女』のような貧乏大学生がわちゃわちゃする物語ではなく、どちらかというと『きつねのはなし』を昇華させたような作品です。

学生時代の友人たちが観光や仕事で訪れた先で岸田道生という画家が日本各地の風景を銅版画に描いた「夜行」シリーズと出会い、幻想的な出来事が展開されます。そして、そこには鞍馬の火祭りの夜に姿を消した長谷川さんという女性の姿が見え隠れします。
そして、それらは最終章の「鞍馬」に収斂されます。

(鞍馬の火祭でさえ)静寂でしんとして、迷い込んで抜け出すことのできない夢のように不穏な空気感に満たされています。
「もうひとつの京都」という異世界は従来の森見さんの作品にも描かれていましたが、今作はネガとポジとでもいうべき世界が展開され、魅了されます。

いろいろ伏線は回収されていませんが、ラストがじわっときます。

何度も読み返して味わいたい作品です。

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柚月裕子さん「慈雨」 [本☆☆☆]


慈雨 (集英社文庫)

慈雨 (集英社文庫)

  • 作者: 柚月 裕子
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2019/04/19
  • メディア: 文庫



四国の遍路道で過去と向き合う元刑事と、現在進行形で進む少女誘拐殺人事件の捜査が並行して描かれる警察小説です。
ストーリイ展開はやや陳腐ではありますが、それ以上に深い感動を味わえます。

警察官を定年退職し、妻と共に四国遍路の旅に出た神場。旅先で知った少女誘拐事件は、16年前に自らが捜査にあたった事件に酷似していた。手掛かりのない捜査状況に悩む後輩に協力しながら、神場の胸には過去の事件への悔恨があった。場所を隔て、時を経て、世代をまたぎ、織り成される物語。事件の真相、そして明らかになる事実とは。安易なジャンル分けを許さない、芳醇たる味わいのミステリー。
(「BOOK」データベースより)

過去に扱った少女誘拐殺人事件の結末に葛藤する元刑事の神場が妻の香代子と四国遍路の中で自らと向き合うパートと、同時期に起こった少女誘拐殺人事件を捜査する緒方刑事のパートが交互に描かれ、事件の真相に迫っていく展開は緊迫感があります。

神場と緒方は同じ職場の先輩後輩の間柄で、緒方は神場に尊敬の念を抱いていることが伝わってきます。物証の少ない犯行にアドバイスを求められた神場もまた職務に誠実な緒方に対して敬意を抱いていて、信頼し合っている二人の関係が貴いものに思えます。

それだけでなく、夫婦、親子、恋人、上司と部下(神場と緒方、鷲尾捜査一課長と神場、鷲尾と緒方)など様々な関係性が描かれ、そこには深い信頼関係があります。

神場と香代子、娘の幸知の過去が遍路道の最中に回想というかたちで描かれていて、時間軸という深みをもたらしています。

結末は苦いものになるのですが、神場(と香代子)の選んだ決意は潔く、清々しいものでした。
本を読む愉しみを存分に味わえる作品だと思います。

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川瀬七緒さん「女學生奇譚」 [本☆☆☆]


女學生奇譚 (徳間文庫)

女學生奇譚 (徳間文庫)

  • 作者: 川瀬七緒
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2019/07/05
  • メディア: 文庫



もうタイトルだけでワクワクしてしまいます。そして読み応えがあり、物語を堪能できます。

フリーライターの八坂駿は、オカルト雑誌の編集長から妙な企画の依頼をされる。「この本を読んではいけない……」から始まる警告文と古書を、竹里あやめという女が持ち込んできたのだ。その古書の本来の持主である彼女の兄は数ヶ月前に失踪、現在も行方不明。このネタは臭う……八坂は、タッグを組むカメラマンの篠宮、そしてあやめとともに謎を追う。いたずらか、狂言か、それとも――。最後まで目が離せない、サスペンスミステリー!
(出版社HPより)

『この本を読んではいけない。過去に読んだ者のうち五人が発狂し、二人が家から出られなくなり、三人が失踪している。 もう一度警告する。ただちに本を閉じよ。』という警告文は夢野久作の『ドグラ・マグラ』みたいです。
それだけで読書欲を掻き立てられます。

昭和初期の頃に女学生が書いたという作者不明の手記風の古書をめぐって真贋鑑定を手始めに、古書の内容から当事者を探し出し真相に迫ろうとします。
失踪した依頼人の兄はどこへ行ったのか。古書との関係は何なのか。

オカルトホラーで始まって、硬質なミステリが展開され、サスペンスへと続きます。挿入される『女學生奇譚』が狂気じみた雰囲気をまとっていてページを繰る手が止まりません。

明かされた組織というのがやや拍子抜けだったものの、辿り着いた真相の衝撃度といったら…。

メンタルの弱っている人は読まないほうがいいかもしれません。

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米澤穂信さん「いまさら翼といわれても」 [本☆☆☆]


いまさら翼といわれても (角川文庫)

いまさら翼といわれても (角川文庫)

  • 作者: 米澤 穂信
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2019/06/14
  • メディア: 文庫



待ちに待った古典部シリーズ第6弾です。
前作『ふたりの距離の概算』から6年。キャラ設定もすっかり忘れていました。

「箱の中の欠落」「鏡には映らない」「連峰は晴れているか」「わたしたちの伝説の一冊」「長い休日」「いまさら翼といわれても」の6編が収められています。

「ちーちゃんの行きそうなところ、知らない?」夏休み初日、折木奉太郎にかかってきた〈古典部〉部員・伊原摩耶花からの電話。合唱祭の本番を前に、ソロパートを任されている千反田えるが姿を消したと言う。千反田は今、どんな思いでどこにいるのか――会場に駆けつけた奉太郎は推理を開始する。千反田の知られざる苦悩が垣間見える表題作ほか、〈古典部〉メンバーの過去と未来が垣間見える、瑞々しくもビターな全6篇。
(出版社HPより)

それぞれの作品で古典部の各部員にスポットライトが当たります。
高校生活の中で起こる謎解きに加えて奉太郎の過去(省エネをモットーに至った理由)にもスポットライトが当てられます。

特に表題作は秀逸だと思いました。
あの責任感の塊のような千反田がイベントの主役を前にして失踪してしまいます。
その理由と背景(完全に説明されたものではありませんが)はこのシリーズの転換点になるのかもしれません。

奉太郎たちも高校2年生。進路を考える時期にきていて(『わたしたちの伝説の一冊』はまさにそれ)、そういう意味合いを含んだ短編集だと思いました。

なんといっても古典部員4人(奉太郎、える、里志、摩耶花)のキャラクターが魅力的に描かれています。
摩耶花が奉太郎に抱いていた嫌悪感も誤解で、更には級友を救う行為だったことに対する敬意に変わる場面は胸が熱くなりました。(それに対して奉太郎が頬を赤くするシーンもいいです)

続編が楽しみです。

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佐藤亜紀さん「スウィングしなけりゃ意味がない」 [本☆☆☆]


スウィングしなけりゃ意味がない (角川文庫)

スウィングしなけりゃ意味がない (角川文庫)

  • 作者: 佐藤 亜紀
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2019/05/24
  • メディア: 文庫



佐藤亜紀さんでないと書けない作品です。
それまでの作品に見られたようなファンタジー要素のない、(おそらく)史実に沿った第2次世界大戦期のナチス政権下のドイツの空気すら感じられるようです。

1940年代、ナチス政権下のドイツ。
金もあるし、暇もある。
無敵の悪ガキどもが、夢中になったのは敵性音楽のジャズだった――!

1939年ナチス政権下のドイツ、ハンブルク。軍需会社経営者である父を持つ15歳の少年エディは享楽的な毎日を送っていた。戦争に行く気はないし、兵役を逃れる手段もある。ブルジョワと呼ばれるエディと仲間たちが夢中なのは、”スウィング(ジャズ)”だ。敵性音楽だが、なじみのカフェに行けば、お望みの音に浸ることができる。ここでは歌い踊り、全身が痺れるような音と、天才的な即興に驚嘆することがすべて。ゲシュタポの手入れからの脱走もお手のものだ。だが、そんな永遠に思える日々にも戦争が不穏な影を色濃く落としはじめた……。一人の少年の目を通し、戦争の狂気と滑稽さ、人間の本質を容赦なく抉り出す。権力と暴力に蹂躙されながらも、“未来”を掴みとろうと闘う人々の姿を、全編にちりばめられたジャズのナンバーとともに描きあげる、魂を震わせる物語。
(出版社HPより)

10代の少年ができることかどうかはともかく、ジャズを聴き、踊る、ただそれだけに情熱をかける少年たちが描かれます。
初めは鼻持ちならない金持ち連中と思い、次第に様々な境遇の少年たちを組んで体制(ゲシュタボやヒトラーユーゲント、親衛隊)に反逆し始めることで痛快さを覚え、やがて空爆により多くのものを失い、虚無の中で終戦を迎え、自由、開放、喪失感それらがないまぜになったやるせなさをひしひしと感じました。

BBCのラジオ放送に耳を傾け、ラジオの感度を上げるためにチューニングをし、そこからレコードを作って密売してしまうように、行動原理の中心にジャズがあります。そこには金持ちも貧乏もなく、政治理念の右左もなく、アーリア民族もユダヤ民族の隔てもありません。けれども「音楽の前では平等」とかイデオロギーをふりかざすこともありません。
自然で自由で規制されない経済主義とでもいいましょうか。

決して戦争の悲惨さを訴えるのがテーマではありませんが、ラストにいいようのない幸福感と虚脱感と無常さを覚えました。


ドイツ全土ではなくハンブルグだけが降伏するなんてことがあったんですね。大阪だけが降伏するようなイメージですかね。

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樋口有介さん「少女の時間」 [本☆☆☆]


少女の時間 (創元推理文庫)

少女の時間 (創元推理文庫)

  • 作者: 樋口 有介
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2019/05/21
  • メディア: 文庫



柚木草平シリーズ11弾です。
今回もしっかり「女難の相」が出ています。

月刊EYESの小高直海経由で、大森で発生した未解決殺人事件を調べ始めた柚木。二年前、東南アジアからの留学生を支援する組織でボランティアをしていた女子高生が被害にあった事件だが、調べ始めたとたんに関係者が急死する事態に。事故か殺人か、二年前の事件との関連性は果たして? 美人刑事に美人母娘、美人依頼主と四方八方から美女が押し寄せる中、柚木は事件の隠された真実にたどり着けるのか──。“永遠の38歳”の青春と推理を軽やかに贈る、最新長編。柚木草平初登場作『彼女はたぶん魔法を使う』を思わせる、ファン必読の書。
(出版社HPより)

後書きで、構想に詰まって「ええい、とにかく美女を大量動員してしまえ」と言っているように、超絶絶世の美少女から個性的な美女まで登場し、草平を翻弄します。しかも揃いも揃って面倒くさい性格。

それに対抗してハードボイルドを装った柚木草平節も健在です。

それでいて、しっかりとミステリしていて、終盤で草平が辿り着いた真実と彼が下す決断には苦いものがあります。
これぞハードボイルドだなぁ。

『風景を見る犬』から枝沢柑奈が、『枯れ葉色グッドバイ』から吹石夕子が「出張」しています。
その他に風町サエがカメオ出演しています。

大サービスな作品です。

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上田早夕里さん「ラ・パティスリー」 [本☆☆☆]


ラ・パティスリー (ハルキ文庫)

ラ・パティスリー (ハルキ文庫)

  • 作者: 上田 早夕里
  • 出版社/メーカー: 角川春樹事務所
  • 発売日: 2010/05/01
  • メディア: 文庫



中村祐介さんの表紙イラストで手に取ってみました。
神戸の洋菓子店を舞台にした小説です。
と思ったら、「華竜の宮」や「リリエンタールの末裔」の作家さんでした。意外~。

森沢夏織は、神戸にあるフランス菓子店“ロワゾ・ドール”の新米洋菓子職人。ある日の早朝、誰もいないはずの厨房で、飴細工作りに熱中している、背の高い見知らぬ男性を見つけた。男は市川恭也と名乗り、この店のシェフだと言い張ったが、記憶を失くしていた。夏織は店で働くことになった恭也に次第に惹かれていくが…。洋菓子店の裏舞台とそこに集う、恋人、夫婦、親子の切なくも愛しい人間模様を描く、パティシエ小説。
(出版社HPより)

タイトルの通りフランス菓子店“ロワゾ・ドール”を舞台にした小説です。

新米洋菓子職人の夏織の奮闘記でもありますし、記憶喪失で一流の腕を持つ市川恭也を巡るミステリでもあります。あとちょっと、夏織の恭也への恋愛模様もあります。
また、オーナーやパティシエ(シェフパティシエやスーシェフ、ショコラティエなど細分化されているのも知りました)といった従業員たちの人間模様も描かれます。

なにより製菓のシーンの描写が細かくて想像力が刺激されるほど美味しそうです。ケーキに焼き菓子にチョコレート…。
それだけでなく、お店の経営や構造、デパ地下への出店などもあり盛り沢山です。

盛り沢山だけに全体的に印象が薄かったです。


パティシエって想像以上に重労働なんですね。しかも長時間勤務。これからはありがたく頂かないと。

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碧野圭さん「菜の花食堂のささやかな事件簿 金柑はひそやかに香る」 [本☆☆☆]


菜の花食堂のささやかな事件簿 金柑はひそやかに香る (だいわ文庫)

菜の花食堂のささやかな事件簿 金柑はひそやかに香る (だいわ文庫)

  • 作者: 碧野 圭
  • 出版社/メーカー: 大和書房
  • 発売日: 2018/06/09
  • メディア: 文庫



シリーズ第3弾です。
今回も身近な食材での料理と、料理に関する謎を靖子先生が解き明かします。

「小松菜の困惑」「カリフラワーの決意」「のらぼう菜は試みる」「金柑はひそやかに香る」「菜の花は語る」の5編が収められています。

「靖子先生、そういう謎を解くのが得意なんです。いつも、ちょっとしたヒントから真実を見つけてくれるんです」
手を掛けたランチが評判の菜の花食堂を営む靖子先生はいつも、とびきりの料理と謎の答えと、明日へと進むためのヒントを手渡してくれる──。
好き嫌いがないはずの恋人が手作りのお弁当を嫌がるのはなぜ?
野菜の無人販売所の売上金が、月末に限って増えている理由は?
小さな食堂の料理教室を舞台に『書店ガール』の著者が描き出す、あたたかくて美味しい大人気日常ミステリー、待望の第三弾!
(「BOOK」データベースより)

新たに瓶詰ピクルスの製造販売も始めて、料理教室の常連だった香奈さんが本格的に助手として加わることになります。

また、仕事をしながら料理教室のアシスタントをしていた語り手の優希もある決意を固めます。

日常の謎を解きながらも、少しずつ菜の花食堂も変わっていくようです。
地域の人に愛されるような食堂になるといいな。

靖子先生の秘密や謎が少しずつ明らかにされる構成はなかなか憎いですね。

最後の「菜の花は語る」がよかったです。
次作も楽しみです。


今年一年お付き合いくださいまして、ありがとうございました。
来年もよろしくお願いします。
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朝井まかてさん「眩(くらら)」 [本☆☆☆]


眩 (くらら) (新潮文庫)

眩 (くらら) (新潮文庫)

  • 作者: 朝井 まかて
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2018/09/28
  • メディア: 文庫



葛飾北斎の娘で絵師だった応為(お栄)の半生を描いた物語です。骨太!

あたしはただ、絵を描いていたいだけ。愚かな夫への軽蔑、兄弟子への叶わぬ恋、北斎の名を利用し悪事を重ねる甥――人生にまつわる面倒も、ひとたび絵筆を握ればすべて消え去る。北斎に「美人画では敵わない」と言わせ、西洋の陰影表現を体得し、全身全霊を絵に投じた絵師の生涯を圧倒的リアリティで描き出す、朝井まかて堂々の代表作!
(出版社HPより)

以前に北斎を主人公にした小説(なんだったかな)を読んだときに娘の描写があった記憶はあるんですが、印象が薄かったです。
ですが、北斎の製作にも関わっていただけでなく、自らも相当の作品を残しているそうで、それほど史実には残っていないであろう応為の人生を描き切っている朝井さんの想像力と筆力に感服しました。

ただ画家としての日常だけでなく、己の才能への鬱屈や兄弟子である善次郎(渓斎英泉)への想いや日々の生活の情景も描かれ、江戸時代なのにリアリティを感じてしまいます。


表紙にもなっている「吉原格子先之図」の陰影の深みが写実以上のリアリティさを感じます。西洋画を研究し尽くして自分の絵に昇華させたひとつの結実です。

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新海誠さん「小説 言の葉の庭」 [本☆☆☆]


小説 言の葉の庭 (角川文庫)

小説 言の葉の庭 (角川文庫)

  • 作者: 新海 誠
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/メディアファクトリー
  • 発売日: 2016/02/25
  • メディア: 文庫



映画の空気感はそのままに、より深い物語世界を味わえます。

また会うかもね。もしかしたら。雨が降ったら―。雨の朝、静かな庭で2人は出会った。靴職人を志す高校生の孝雄と、謎めいた年上の女性・雪野。迷いながらも前に進もうとする2人は、どこへ足を踏み出すのか。圧倒的な支持を受けた劇場アニメーション『言の葉の庭』を、新海誠監督みずから小説化。アニメでは描かれなかった人物やエピソードを多数織り込み、小説版ならではの新たなる作品世界を作り上げた傑作。
(「BOOK」データベースより)

映画では孝雄と雪野のほぼ2人の逢瀬と生活のシーンだけでしたが、小説では孝雄の母と兄、兄の恋人、雪野の同僚であり元恋人といった人々の視点で彼らが描かれていて、孝雄と雪野の姿がよりくっきりと浮かび上がってきます。

靴職人を目指す孝雄と雨の公園の東屋で朝からビール缶を傾ける雪野との出会いと互いが惹かれていく様子と別れが万葉集の歌をベースに丁寧に描かれます。
その光景の描写は映画の緻密な描写に劣らず鮮やかにイメージができます。平易で彩りのある文章ゆえかもしれません。

また、映画とは違う(ような)小説版のエンディングは2人の希望にも取れ、清々しい読後感でした。

小説を読むことで原作(?)の映画の見方が変わるかもしれません。
もう一度映画を見てみよう。

雨の新宿御苑がモデルになっています。近いし、行ってみようかな。
巡礼者がたくさんいそうですが。。。

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