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本多孝好さん「MOMENT」 [本☆☆☆]

病院で清掃のアルバイトをする「僕」を主人公とした4つの短編連作です。
主人公が、アルバイト先の病院で死を直前にした患者たちの願いをかなえるために行動します。
10代、30代、老年それぞれの願いは、話が進むにつれて彼らの語る願いとは違った様相を
帯びてきます。死を前にして、彼らが必ずしも達観しているわけでなく、奇麗事で終わらないところも
よかったです。
感動的なシーンも、ドラマティックな展開もないんですが、単純に「いいな」と思いました。

著者の描く主人公って、どこか世を拗ねているというか、うまくアタッチメントできてないところが
あり、それが今風なんでしょうが、彼らがどのようにして社会とアプローチするかという隠された
テーマが、僕の読んだ一連の作品から感じられました。本書も同様に、有名大学の4年生なのに、
就職活動もおざなりにして、アルバイトに邁進しているようなところがあります。主人公の幼馴染の
台詞に『どこへ逃げようと一緒じゃねえのか?お前が折り合えないのは、この時代でも今の社会
でもなくてお前自身だろ?』とあります。誰しもが多かれ少なかれ自分と折り合いをつけて生きて
いると思います。そういうベースの部分で生きるとは、というテーマに共感したのかもしれません。

MOMENT

MOMENT

  • 作者: 本多 孝好
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2005/09
  • メディア: 文庫


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コメント 2

長谷川舞

はじめまして。
私も本多孝好さんの作品の中では「MOMENT」が1番好きです。
願いを叶えながらも主人公が正義感や情にかられて・・・ではなく
何となくやっている、というドライさが返って良かったように思いました。
続編が書かれる・・・という噂を聞いたので、楽しみだなって思っています。
by 長谷川舞 (2006-02-14 21:22) 

とも〜る

はじめまして。
「ALONE TOGETHER」では、突き放した感じがしていましたげど、
今回は、適度な距離感を保ちつつも依頼人の心情を汲み取って
あげているところがよかったかもしれませんね。
続編、ということは、留学から帰ってきてからの話なんでしょうか。
五十嵐医師との決着(?)や森野との関係など、描かれるので
しょうか。楽しみです。
by とも〜る (2006-02-14 23:23) 

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