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大崎善生さん「ドナウよ、静かに流れよ」 [本☆☆]

ドナウよ、静かに流れよ

ドナウよ、静かに流れよ

  • 作者: 大崎 善生
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2006/06
  • メディア: 文庫

ここのところちょっと凹み気味だったので、正直いって読み通すのはしんどかったです。
男女がオーストリア・ウィーンのドナウ川から入水自殺をしたという小さな新聞記事を著者が
目にするところから始まります。見過ごしてしまいがちなその記事に心を惹かれた著者は
つてを頼りながら事件の詳細を知ることから始めます。思いがけない繋がりで亡くなった19歳の
女子学生 日実(かみ)の両親とコンタクトを取ることができるようになったところから、新聞記事の
中の見知らぬ誰かだった人間がその貌を見せるようになっていきます。
やがて33歳の自称指揮者という男性 千葉の経緯やその奇矯ともいえる行動も明らかにされて
いきます。
取材はウィーンから彼女の留学先だったルーマニアへ、そして再びウィーンへ。
しんどかったのは、異国の地で経済的にも精神的にも追い詰められていく二人の過程でした。
周囲の人たちへのヒアリングを通しての著者の想像によるところが大きいのですが、男性の
虚言癖や奇行が二人を日本人コミュニティから孤立させていく様は痛々しくすら思えました。
そんな状態になってもなお、彼を見放し、彼から逃げ出すことをしなかった彼女の男性への
傾倒していく心のうちはわかりませんが、それを愛だと言い切ってしまうのは安易な気もする
反面、それを説明する言葉を持てないもどかしさが残りました。
結果的に命を絶つことでしか結論を出せない行為を愛と謳ってしまっていいのか、自分には
判断ができませんでした。(所詮は個人の心の中の昇華でしかないとわかっていても)
そういう状態に追い込んでしまった彼女の両親や友人、知人たちは揃って悔恨の言葉を
述べます。少なくとも彼女がもう少し大人で、周囲を見渡すことができるだけの余裕と経験が
あればこの悲劇も起こらなかったのかもしれません。
自分の中でこの本がどう位置づけられるのかはわかりませんが、少なくとも自分の周りには
自分を支えてくれる人がいる幸せを改めてかみしめました。


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