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加藤廣さん「秀吉の枷」 [本☆☆☆]


秀吉の枷〈上〉 (文春文庫)

秀吉の枷〈上〉 (文春文庫)

  • 作者: 加藤 廣
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2009/06/10
  • メディア: 文庫



秀吉の枷〈中〉 (文春文庫)

秀吉の枷〈中〉 (文春文庫)

  • 作者: 加藤 廣
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2009/06/10
  • メディア: 文庫



秀吉の枷〈下〉 (文春文庫)

秀吉の枷〈下〉 (文春文庫)

  • 作者: 加藤 廣
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2009/06/10
  • メディア: 文庫



「信長の棺」の続編にあたる作品です。「信長の棺」は信長の死の真相や遺体の行方などを探るミステリでしたが、この作品は本能寺の変前後から秀吉の死までの秀吉の心理状態を描いた作品になっています。
史実による秀吉の行動を基に秀吉の「心の闇」に対する恐怖、後悔、諦念と心理の移り変わりや、天下人になってからの行動に対する一般的な解釈に対する作者の解釈の提示がされています。そのため、ミステリから離れて時代小説らしくなっていると思います。

稀代の軍師 竹中半兵衛の遺言から物語は始まります。死の床で半兵衛は秀吉に3つの策を授けます。それは時代の先を見通したものでした。
半兵衛の死を境に秀吉の意識が変わり始めます。ただ信長の命令に従っていた牛馬のように働いていた時から、一線を画して信長を見つめるようになります。そこには秀吉の出自の秘密も一側面としてありました。やがて秀吉の心の離反が静かに始まります。
半兵衛の遺言に従って敵方だけでなく織田軍団各武将への諜報網も整備します。その諜報網に引っかかったのが明智光秀の動きであり、いちはやく光秀の謀反の動きを知ります。知りながら、秀吉は部下に秘密の作事を命じます。やがて本能寺の変が起き、信長の遺体はどこかへ消えてしまいます。
秀吉は機敏な動きと計略と人心掌握で光秀、柴田勝家らライバルを蹴落として、やがて天下を掴みます。
そして凋落がやって来ます。

前半と後半で秀吉の対照的な人生が語られます。活動的で上を目指していた前半は勢いを感じます。一転して、後半は秘密の発露に懼れ、孤独に襲われ、殺戮に走り、全てが裏目裏目に出ます。
その姿が哀れに思います。身から出た錆、因果応報ではあるのですが、臨終の際の秀吉の叫びがずっと押し隠していた枷に締め付けられた挙句の果てで、悲哀に満ちているように感じました。

信長にしても秀吉にしても、修羅の道を歩まざるを得なかったわけで、このシリーズで安寧は訪れるのでしょうか。

3部作の最後は「明智左馬助の恋」。明智左馬助はよく知らない人物ですので、楽しみです。

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