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瀬尾まいこさん「図書館の神様」 [本☆☆]


図書館の神様 (ちくま文庫 せ 11-1)

図書館の神様 (ちくま文庫 せ 11-1)

  • 作者: 瀬尾まいこ
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2009/07/08
  • メディア: 文庫



瀬尾さんの作品は心に傷を負った主人公が再生していく過程を描いたものが多いのですが、この作品もその一つです。
表題作と、短編「雲行き」が収録されています。

「図書館の神様」
主人公の清は中学高校と情熱を傾けたバレーボールをある出来事をきっかけに辞め、目的もないままに故郷から離れた地方の高校の講師になります。そこでなぜか文芸部の顧問に指名されてしまいます。文芸部は垣内君という3年生1人の部でした。文学とは程遠い(国語の教師なのに!)人生だったのが、部活に付き合ううちに垣内君に影響を受けて本を読むようになり、垣内君との問答の中で自分の過去の行為(「正しさ」とは)を自問するようになります。
脇を固めるのは、清と不倫関係にあるケーキ職人、海なし県から海を見たくてやってくる清の弟、教師採用試験に落ちまくっている清の同僚講師などが清の日常を支え、垣内君とのクラブ活動が非日常とでもいうべき文学世界へ誘います。この辺りの匙加減がいいと思いました。

ただ、高校生ならともかく、大学卒業してまでも「正しさ」の多様さに気づかないのはどうかと思ってしまいます。
まあ、そんな大人はいくらでもいて、日々あちこちで諍いを起こしていたりしますが。(それは分かっている上でくだらないメンツのためだと思っているのですが…そうでないなら本物のバカ)

また、物語の終わりに3通の手紙が主人公の許に届くのですが、主人公の行為を赦すその手紙がすんなりと受け入れられないでいました。手紙がいけないのではなく、なんというのか、タイミングがよすぎる気がしたのです。小説ですから、というより小説だからタイミングは大事だと思ったのです。

そして、とうとう文芸部の垣内君の心の傷は明かされず仕舞いでした。それを隠すように生きている垣内君にこそ再生のチャンスが必要だったのではないかと思うのですが。。。

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