坂木司さん「切れない糸」 [本☆☆]
坂木司さんの新シリーズ(になるのかな?)です。定番の日常の謎&連作短編集です。
「ひきこもり探偵」シリーズと同様に、人の優しさを感じる作品です。
新井和也は就職先も決まらない大学生だったのですが、クリーニング屋を営む父親の急逝によって、店を継ぐ決意をします。
アライクリーニングはカウンター受付の母とパートのおばさん、アイロン職人のシゲさん、そして配達・集荷担当の和也という受け持ちになっています。
外回りで仕入れてきたり巻き込まれた街の噂や客の謎を、和也と同じ大学の同級生で同じ商店街の喫茶店「ロッキー」を一人で切り盛りしている沢田に持ち込みます。
突然おかしな行動をとるようになるサラリーマン、入社と同時にイメチェンを図った同級生、きわどい女性ものの服ばかりを出す中年男性などを沢田は和也の話を聞くだけで解決してしまいます。
「ひきこもり探偵」シリーズもそうでしたが、安楽椅子探偵ものですね。和也がワトソン、沢田がホームズともいえるかもしれません。その点ではクリーニング屋の外回りというのはうまく考えたな、と思いました。
また、和也は小学生のときから「町の生物委員」と呼ばれていたのですが、これもうまい設定だなと思いました。
難点を言えば途中で謎がなんとなくわかってしまうところ。謎解きにプラスアルファはあるものの、ネタが見えてしまう手品ほど興ざめなものはないです。ただ、プラスアルファの部分に奥深いものがあったのと和也がクリーニング屋という仕事に目覚めていく過程と地元の人間関係を深めていくところがうまく結びついていて読後感がよかったです。
まだ沢田の過去など描かれていない部分もありますので続編を読みたいと思いました。
コメント 0