海堂尊さん「イノセント・ゲリラの祝祭」

イノセント・ゲリラの祝祭 (上) (宝島社文庫 C か 1-7)

• 作者: 海堂 尊
• 出版社/メーカー: 宝島社
• 発売日: 2010/01/08
• メディア: 文庫

イノセント・ゲリラの祝祭 (下) (宝島社文庫 C か 1-8)

• 作者: 海堂 尊
• 出版社/メーカー: 宝島社
• 発売日: 2010/01/08
• メディア: 文庫

「チーム・バチスタ」シリーズ第4弾です。海堂さんにとって、この小説を書くことは必然だったんだと思います。

厚労省医政局長の私的審議会の委員に東城大学病院の田口医師が招聘されます。画策したのはもちろん厚労省の火喰い鳥こと医療過誤死関連中立的第三者機関設置推進準備室室長の白鳥です。その審議会とは医療事故防止のための委員会創設のための検討会というもの。
しかし、検討会を仕切る「ミスター厚労省」八神課長の目論見は、法医学者、病理医、法律家といった委員たちにそれぞれの決して噛み合うことのない意見を主張させ、挙句の果てに空中分解させて厚労省の都合のいい着地点に落とそうというものでした。
その動きを見越して「エーアイ」導入を目指す白鳥と、望むと望まないとに関わらず巻き込まれる田口。そして、田口の大学時代の後輩・彦根が参戦します。
このメインストリームに絡むように新興宗教団体によるリンチ殺人事件や、極北市民病院での医療事故が発生し、警察庁が何事かを画策する動きが語られます。

ミステリではありません。海堂さん言うところの「死因不明社会」の現実と、遅々として進まない現実に対する強力な批判ととれます。彦根が検討会で並み居る委員たちと官僚をめった斬りにするシーンは爽快ですし、彦根の主張が現実化したら日本のグズグズになっている医療も少しはマシになるのかもしれない、という期待を抱かせる提案でした。

この物語には続きがありそうです。裏で動く警察庁とそれに対する厚労省の主導権争いになるのかな？
医療現場から離れていきますが、これはこれで面白そうです。続編が楽しみです。

しかし、上下巻にする必要はあったんでしょうか。1巻にしても大した厚さにはならないと思うんですが。
出版社の思惑を疑ってしまうのは、うがちすぎ？