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樋口有介さん「誰もわたしを愛さない」 [本☆☆☆]


誰もわたしを愛さない (創元推理文庫)

誰もわたしを愛さない (創元推理文庫)

  • 作者: 樋口 有介
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2007/09/11
  • メディア: 文庫



柚木草平シリーズ第6弾です。初出時には第4弾だったそうで、その理由らしきものが当事者の方が状況証拠をもとに解説で書かれています。果たしてそれが真相かどうかは定かではありませんが、そんな理由もあるんだ、と内幕を見たような気分になりました。

柚木草平に雑誌社から事件記事の依頼がきます。渋谷のラブホテルで死体で発見された女子高生を巡るものです。援助交際の果てのトラブル、行きずりの犯行と見られていて犯人の男は目星も付けられていない。そんな事件に柚木は気乗りしなかったのですが、原稿料アップの申し出に渋々引き受けます。
柚木は被害者の友人やボーイフレンドといった交友関係を当たりますが、そこから見えてくる人物像は被害者が援助交際といった行為から程遠いものでした。
やがて被害者の周囲には見せなかったもう一つの顔が顕になってきたとき、思いがけない事件の構図が浮かび上がってきました。

物語が進むにつれて、証言者の言葉によって顔の見えなかった被害者が様々に顔を変えていき、物語自体が変転していくのは読んでいてスリルがありました。
今までの柚木草平なら地の文で屈託をうたいながらも、どこか美女に振り回されるのを楽しんでいる風があったんですが、今回はどこか全体的に鬱屈が重く感じられます。文庫版後書きで樋口さんが「そういう時期だった」ようなことを書いていますので、作品にも反映されたのかもしれません。
或いは美女に翻弄される場面が少なかったためにそう感じたのかもしれません。小高直海という新人編集者がレギュラー入りしているのですが、逆にいうとそれだけなんですね。そのせいかな、とも思っています。

書かれたのが10年前になるんですね。なのでトリックも時代を感じさせます。逆に言うと、当時は新鮮だったのかもしれませんが、今では…。
ただ、犯人のセリフは今も通用するなあ、10年前から変わっちゃいないんだなあと思いました。

マンネリ化している部分あり、そうでないところもあり、だからシリーズが続くんでしょうね。

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