伊坂幸太郎さん「モダンタイムス」 [本☆☆☆]
『モダンタイムス』というとチャップリンの映画を思い出します。そのタイトルに込められた意味もあるのでしょうね。
システムエンジニアの渡辺拓海が会社から仕事を渡されます。それは出会い系サイトの仕様変更でした。
簡単な内容だったはずのそのプログラムには不明な点が多く、解析していくうちにプログラムの目的が浮かび上がります。そんな中、会社の上司や同僚が自殺したり警察に逮捕されたりします。共通項はある複数のキーワードを同時に検索していたのでした。
『魔王』の続編であり、『ゴールデンスランバー』の姉妹編とでもいうべき物語です。
伊坂作品らしい軽妙な語り口はそのままで、作者のメッセージが込められています。
上下巻というボリュームですが、さくさく読めてしまいました。
伊坂さん自身が会社員時代にSEをしていたということで、小説の中でもSEの生態がよく描かれています。この作品は近未来の話なんですが、SEの生態は変わっていないのかな…。
近未来という意味では、物語でのテクノロジーの進歩というのは見られませんでしたね。それが物語上意味が無いことだったのか、作者が不要だと思ったのかはわかりませんが。
そんな中でも「検索」という今や欠かすことのできないネットツールが物語の核となっていることが目の付けどころなんでしょうね。ありえないことじゃない。
張り巡らされた伏線も謎もスッキリとけたのですが、ひとつだけ、もやもやという点では主人公の妻の正体がはっきりしないままでした。一体何者だったんでしょう。
意図的に残す謎や、注目させておくためだけに必要な意味のない謎以外は全て解決してくれないと・・・読み手はすっきりしませんよね。
by φ(・ω・)かきかき (2012-01-21 14:19)