伊坂幸太郎さん「マリアビートル」 [本☆☆☆]
東北新幹線に殺し屋がいっぱい 乗り合わせたくないなー。
幼い息子の仇討ちを企てる、酒びたりの元殺し屋「木村」。優等生面の裏に悪魔のような心を隠し持つ中学生「王子」。闇社会の大物から密命を受けた、腕利き二人組「蜜柑」と「檸檬」。とにかく運が悪く、気弱な殺し屋「天道虫」。疾走する東北新幹線の車内で、狙う者と狙われる者が交錯する――。小説は、ついにここまでやってきた。映画やマンガ、あらゆるジャンルのエンターテイメントを追い抜く、娯楽小説の到達点!
(「BOOK」データベースより)
殺し屋たちが活躍する「グラスホッパー」の続編という形をとってはいるものの、まったく別のストーリイとして楽しめます。
殺し屋というと寡黙で不気味なイメージではあるんですが、伊坂さんの描く殺し屋はどこか抜けているというか人間味があるというか。なんでも機関車トーマスになぞらえて話す「檸檬」や、どこまでもツイてない「天道虫」といったキャラクターに殺し屋のイメージは持ちにくいのですが、やるときはやります ^^b
疾走する東北新幹線のスピードに負けないだけの疾走感あふれるストーリイ展開です。
その一方で、元殺し屋「木村」と彼が復讐をたくらむ中学生「王子」との対峙は静なイメージでした。(殺し屋たちがドタバタしすぎるのか)
ただ、「王子」についてはいいようのない薄気味悪さがありました。自らの手を汚すことなく他者を傷つけること、他者を操ること、殺人はなぜいけないのかという問いかけをする中学生という存在は悪魔的という表現ではいい表しようのない不気味さ・薄気味悪さがありました。
終盤でチェックメイトにたどり着いた「王子」に待ち受ける出来事があるのですが、カタルシスを得るには物足りないものがありましたし、結末について納得できるものではありませんでした。モヤモヤ感が残りました。
難しいテーマであることは承知しているのですが、それだけに明確なものを示してほしかったと思います。
どんだけ死人が出るんだ、という結末ですが、それが重苦しくない読後感は伊坂さんならではです。
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