道尾秀介さん「鏡の花」 [本☆☆☆]
死や喪失という闇に包まれた世界にさし込む「光」を感じた短編集です。巧みに構成された作品世界にどっぷりと浸りました。
「やさしい風の道」「つめたい夏の針」「きえない花の声」「たゆたう海の月」「かそけき星の影」「鏡の花」の6編が収められています。
少年が解き明かそうとする姉の秘密、曼珠沙華が物語る夫の過去、製鏡所の娘が願う亡き人との再会…。「大切なものが喪われた、もう一つの世界」を生きる人々。それぞれの世界がやがて繋がり合い、強く美しい光で、彼らと読者を包み込む。生きることの真実を鮮やかに描き出すことに成功した、今までにない物語の形。ベストセラー『光媒の花』に連なり、著者の新しい挑戦が輝く連作小説。
(「BOOK」データベースより)
連作短編集の形をとりながらも少しずつ設定が違っていて、パラレルワールドのような並行世界が展開されます。
「ありえたかもしれない世界」というのは誰しもが思うことでしょうが、道尾さんらしい巧みな構成と物語展開と描写でどの作品も違和感なく(前の作と登場人物の運命が違っていたとしても)読み進めることができました。
そこに「死と喪失」という重苦しいテーマがまるで登場人物たちが輪廻するように絡み合い、最終章で「光」に結実する物語展開に救われたような気持になりました。
2018-04-06 08:27
nice!(21)
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