伊藤計劃さん、円城塔さん「屍者の帝国」 [本☆]
伊藤計劃さんの遺作(というかほとんどプロットしか残っていなかったそうです)を円城塔さんが書き上げた作品です。
伊藤計劃さんのそれまでの作品と趣が違うように感じるのは仕方ないことなのでしょうか。
19世紀末――かつてフランケンシュタイン博士が生み出した、死体より新たな生命「屍者」を生み出す技術は、博士の死後、密かに流出、全ヨーロッパに拡散し、屍者たちが最新技術として日常の労働から戦場にまで普及した世界を迎えていた。後にシャーロック・ホームズの盟友となる男、卒業を間近に控えたロンドン大学の医学生ジョン・H・ワトソンは、有能さをかわれて政府の諜報機関に勧誘されエージェントとなり、ある極秘指令が下される。世界はどこへ向かうのか? 生命とは何か? 人の意識とは何か?若きワトソンの冒険が、いま始まる。
(出版社HPより)
途中からなんかやたらと難解になってしまって、それが円城塔さんのテイストなのか、読み進めるのが苦痛でした。
それでも生者と「屍者」が共存(というより搾取が近いかな)する世界、死者を「屍者」とする仕組みなど魅力的な世界を堪能しました。
ロンドンからグレートゲーム真っ只中のアフガニスタン、維新後の東京、そしてアメリカはサンフランシスコからニューヨークへ、そしてロンドンへ戻ります。
同時代に活躍した実在やフィクション上の人物をこれでもかとぶち込んでくる辺りは面白かったです。
主人公のジョン・H・ワトソンをはじめとしてヴァン・ヘルシング教授、リットン卿やアレクセイ・カラマーゾフ、大村益次郎、川路利良など知っている名前を見つける楽しさもありました。諜報機関の「M」というのはアレかな。「M」の弟で「探偵稼業を営む」人物というのは…。
さらには「ノーチラス号」まで登場したのには思わず「懐かしい」と思ってしまいました。
世界観や仕掛けは魅力たっぷりなのに、なんで読み進まなかったのか。読み終わったときに「やっと読み終わった」と思ってしまったのか。
作家との相性が悪かったんでしょうか。つくづく残念でした。
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