吉田篤弘さん「つむじ風食堂の夜 」 [本☆☆]
「月舟町」シリーズ第1弾です。
なんともいいようのない雰囲気を味わえます。
懐かしい町「月舟町」の十字路の角にある、ちょっと風変わりなつむじ風食堂。無口な店主、月舟アパートメントに住んでいる「雨降り先生」、古本屋の「デニーロの親方」、イルクーツクに行きたい果物屋主人、不思議な帽子屋・桜田さん、背の高い舞台女優・奈々津さん。食堂に集う人々が織りなす、懐かしくも清々しい物語。クラフト・エヴィング商會の物語作家による長編小説。
(「BOOK」データベースより)
どこかおとぎ話のような雰囲気の漂う「月舟町」と素朴な住人たちの物語はなんだか落ち着きます。
登場人物たちは生活感を感じさせないのですが、けれどもしっかりと職業を持って月舟町で暮らしていて、地に足をつけています。
なかでも主人公の雨降り先生はなんだか魅力的に感じます。
月舟アパートメントの屋根裏のような部屋に暮らし、人工降雨の研究をしながらもライターの仕事をしています。仕事のために必要な『唐辛子千夜一夜奇譚』を手に入れようとして古本屋の主人・デニーロの親方に口から出まかせの法外な値段を吹っ掛けられて月舟町を駆け回る破目になったりします。
舞台女優の奈々津との先行きも気になります。
思うに、月舟町の住人たちは裕福ではないですが、自由なんですね。生活に縛られている感じがしない。そこが魅力的に思えるのかもしれません。
月舟町の住人として暮らしてみたい、そう思わせる不思議な魅力の詰まった作品でした。
2019-10-16 09:09
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