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東野圭吾さん「片想い」 [本☆☆☆]

本の厚さの分だけ、読み応えがありました。
「片想い」というタイトルから、ラブストーリイを想起しましたが、いろいろな形の
「片想い」が出てきます。それが物語を厚みのあるものにしています。
登場人物は大学時代のアメリカン・フットボールのチームメイトやマネージャー
です。試合をテレビで見たことはあるんですが、アメリカン・フットボールのルール
はいまひとつよくわからない。わかったのは非常にシステム化されたスポーツ
だな、ということ。選手はそれぞれの役割を与えられ、監督やコーチの指示・
フォーメーションで戦う(らしい)。本書でも、登場人物の役割が大学時代の
ポジションと合うようになっていて、さすがの工夫だな、と思いました。終盤の
新聞記者となったかつてのチームメイトの早田の行動は、思わず唸ってしまった
くらいです。
もう一つ提起されているのは、「男とは女とは」ということです。よく考えてみたら
生物(というか、生命体)というものは、非常に柔軟に出来ていて、急激な環境の
変化にも耐えられるような仕組みになっているものなので、単純に「男・女」で
切り分けができるものではないのだ、ということです。特に脳が発達した人間は
顕著で、本書でも触れられている性同一性障害といった問題もありますし、
そうでない(健常なという言い方は適当でないでしょう)人々でも少なからず
持っているものだということを認識しました。これが隠されたメイン・テーマである
ことは、読後に文庫版の表紙を見て気付きました。
ミステリというよりは、人間ドラマというほうがしっくりきます。かつてチームメイト
だった仲間の過去・苦悩と、それを助けたいという想い。僕も高校時代の
部活仲間といまだにサッカーをしているので、より身近に感じられました。

片想い

片想い

  • 作者: 東野 圭吾
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2004/08/04
  • メディア: 文庫


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