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光原百合さん「時計を忘れて森へいこう」 [本☆☆☆]

『癒し系』だとか、流行ものが安易に大量生産されていくことに違和感を覚えますが、そういい
ながらもほっとする時間・瞬間がほしいと思っていることに違いはありません。
この本で自分が『癒された』かというとそうは思いませんが、少しは爽やかな気分になったかも
しれないです。
創元推理文庫から出ていますが、これがミステリかなという気持ちもあります。どちらかというと
苦悩していた人を救うプロセスを描いたカウンセリング小説のような。
清里がモデルとなっている清海という高原にある自然観察センターにひょんなことから入り浸る
ことになった高校生の女の子と、自然解説指導員(レンジャー)とがセンターを訪れる人々の
悩みを絡まりあった糸を解すように解決します。
作者のあとがきにもありましたが「青臭い」ことは否めません。語り手の女の子にしても今時の
高校生(今時の高校生を知っているわけではないんですが)らしくない、おおらかさやのどかさや、
レンジャーの護さんに寄せる淡い想いなどが逆にこの物語に彩りを加えているように思います。
また、舞台となる清海の森がただのバックグラウンドになっていないところがいいです。そこには
自然と語り合い、共生しようという姿勢があります。決してアナーキーな自然回帰主義ではなく、
つい百年ちょっと前まで日本人が当たり前のように接してきたものであるように思え、すんなりと
受け入れることができました。
北村薫さんや加納朋子さんに通じるものがあるように思えます。優しさが作品を包み込んでいる
雰囲気です。是非、続編を書いてほしいです。

時計を忘れて森へいこう

時計を忘れて森へいこう

  • 作者: 光原 百合
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2006/06/27
  • メディア: 文庫


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