浅田次郎さん「地下鉄に乗って」 [本☆☆☆]
映画化されたということで、読んでみました。前に読んだのは「活動寫眞の女」。
レトロといいますか、こういうお話、好きです。
中年のセールスマン真次は、兄の命日に地下鉄永田町駅の連絡通路からなにげなく地上へと
上がると、そこは東京オリンピックを控えた新中野でした。
そこで真次は父と喧嘩をして家を飛び出してきていた兄とめぐり合います。
1964年の新中野で兄を家まで送り届けた真次でしたが、一夜明けてみると兄が自殺した事実
は変わっていませんでした。
それから真次は度々時を遡るようになります。夢の中、地下鉄の車内、銀座の地下道の登り階段
から、終戦直後の闇市、戦時中、戦前へと。何者かが手引きをするように、時を遡り、その時々の
父と邂逅します。時には会社の同僚のみち子とともに。
戦後の混乱期から裸一貫で事業を興し大企業にまで育て上げた傲慢かつ冷酷な父が冷徹な
リアリストにならざるを得なかった次第が明らかになっていきます。
やがて、兄の死の真相もまた明らかになります。
語られることのなかった父の過去や兄の死がドラマティックに展開される様子に引き込まれました。
わずか数十年の間に廃墟と化し、復興の足がかりをつかみつつある東京の描写も鮮明に想像
できました。
とりわけ、大正モダンの余韻を謳歌する戦前の銀座などは読んでいて目の前にイメージできる
ほどでした。地下鉄銀座線のホームに入るときの一瞬車内の照明が消えるところは、小さい頃に
銀座線に乗ったときのことを思い出しました。なにが起きたの!?って思ったなあ。
父の過去、兄の死の真相、みち子との関係が並行し交差する筋道はてんこ盛りな感もなくはない
ですし、ストーリイ展開としてはオーソドックスで、結末も予想がついたのですが、それでもぐいぐいと
読ませるだけの筆力はさすがだと思いました。予想はしていたものの、やっぱりラストは胸が
じんときました。
はじめまして。
読書傾向がちょっとカブるかなあと感じてコメントです。
浅田次郎は、殆ど読んでいます。
メトロは確か吉川栄治賞受賞作品でしたね。
前のブログの井坂のオーデュポンも読みました。
今は彼の「終末のフール」をぼちぼち読んでいます。
私はいろんな意味でアヒルと鴨の~が忘れられない一作になりそうです。
by fuyuko (2006-10-28 03:00)
こんにちは。niceありがとうございます。
浅田次郎さんも井坂幸太郎さんもまだまだ初心者です。
これから読んでいこうかなと思います。
ただ、移り気なのであっちこっち目移りしちゃうんですよね…。
困ったもんだ。
by とも〜る (2006-10-29 00:02)