米澤穂信さん「夏期限定トロピカルパフェ事件」 [本☆☆☆]
片山若子さんの表紙のイラスト、この巻もいいです。可愛らしくあるんですが
どこか斜に構えているような、ひねこびた、この年代の少年少女が持つ雰囲気
が出ているような気がするんです。
それはこの話の主人公である小鳩君と小佐内さんのイメージでもあります。
前作『春期限定いちごタルト事件』ではいちごタルトを食べられなかったん
ですが、今回はトロピカルパフェ食べられます。小佐内さん、よかったね。
今回も前作と同じ日常の何気ないミステリを積み重ねて、最後に大きな事件の
幕が下りるという手法です。小鳩君の『狐』はともかく、小佐内さんの『狼』加減は
前回よりスケールアップしていて陰湿さというか冷酷さというか自分にとっての
邪魔者を排除することにためらいを感じない点に共感できないところはあったの
ですが、ミステリとして読むと、やっぱり個々の仕掛けにはハマりました。
特に「シャルロットだけはぼくのもの」は小鳩君の仕掛けたトリックを小佐内さん
が解くという知的遊びの楽しさもさることながら、小鳩君が口にするケーキの
味、食感、驚きに思わず「シャルロット食べてみたい~」と本気で思ってしまい
ました。洋菓子はあまり好きじゃないんですけどね。
最後は少し意外な展開ではあったのですが、自分の本質を見極めようとする
真摯さのようなものなのか、或いは本来の自分でいることの快適さから逃れ
られないことに気付いてしまった逃避なのかはわかりませんが、そういう結論に
達したことは(自分でも驚くほどに)受け入れられていました。
順番通りにいけば「秋期限定」「冬期限定」と続編がでるのでしょうが、
今回の結末からの続編はかなりハードルが高くなってしまような気がします。
それは楽しみでもあり、不安でもあります。
個人的にはぜひとも続編を希望するんですけどね。
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