北森鴻さん「狂乱廿四孝」 [本☆☆]
北森鴻さんのデビュー作です。
江戸の地名が東京と変わった時代の歌舞伎界に起こった殺人事件の犯人とその真相を探る
ミステリです。
名前は聞いたことがあったのですが、脱疽(細胞の壊死)によって四肢を切断した歌舞伎役者の
澤村田之助や、歌舞伎作者の河竹新七など実在の人物がでているということで興味を持って
読みました。
江戸歌舞伎随一の女形と呼ばれた澤村田之助が両足を切断した後の明治初年から物語は
始まります。
復帰舞台に多くの観客が詰めかける公演中に主治医が惨殺されます。
その手口は半年前に殺害された大部屋役者のものとそっくりだったことから、何者かによる
連続殺人と見なされます。
その一方で、狂画師の河鍋狂斎(後の河鍋暁斎)が明治政府批判の罪で投獄されます。
その狂斎の描いた老婆の幽霊画が連続殺人の犯人を暗示しているのではないかと気付いた
河竹新七の弟子のお峯は犯人探しを始めます。
その間にも歌舞伎小屋を狙った放火や尾上菊五郎が襲われるなどの事件が続発します。
やがてそれは澤村田之助の出生の秘密という歌舞伎界の一大スキャンダルに繋がる疑惑へと
発展します。
絵に隠されたメッセージ、連続殺人の真相などミステリのネタがてんこ盛りのうえに歌舞伎役者
や座主、作者などのライバル意識や愛憎関係など人間関係が絡み合って、重層的な作品に
なっています。
やや物語が複雑になりすぎて、結末がすっきりしない感あるのと、プロローグとエピローグの
幽霊画による一人語りの必要性など目に付く点がなくもないですが、十分面白いと思いました。
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