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江國香織さん「スイートリトルライズ」 [本☆]

スイートリトルライズ

スイートリトルライズ

  • 作者: 江國 香織
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2006/08
  • メディア: 文庫

江國香織さんはデビュー時から大好きで新刊が出ては読んでいました。流れるようなストーリイ、
はっとするような独特の言い回し、透明な読後感などに魅了されていました。

「東京タワー」辺りからか、少し求めているものと違うな、という感じがしてました。
大人の女性向けの小説になった感じがして、距離を置き始めたのでした。

久し振りに読んだのですが、残念ながらその印象は変わりませんでした。

都内に暮らす聡と瑠璃子が主人公です。結婚3年目。聡は外資系の金融会社の事務職、
瑠璃子は主婦ながら趣味が嵩じてテディベア作家、ときどきお菓子研究家としても雑誌に
載ります。(この国で安価に大量生産される「カリスマxx」みたいなものでしょうか)
真面目で誠実な夫と家庭的で完璧な妻という(端から見たら)理想の夫婦です。

彼らはそれぞれのパートナーに満足と不満を覚え、それを埋めるかのように全く違うタイプの人と
関係を持ちます。
その一方でパートナーに対して誠実に振る舞おうとします。

どうしても主人公たちに共感できませんでした。特に瑠璃子に。「あなたが浮気をしたらその場で
刺す」と言っておきながら、自分は映画翻訳家を目指す春夫との情事に溺れていきます。
聡と居るときは聡を、春夫と居るときは春夫のことを思う。

それに対して聡は、大学の後輩である'しほ'に対して瑠璃子と正反対の率直さ、奔放さ、大胆さに
惹かれながらも、しほにはない瑠璃子の美点に改めて気付き、愛おしささえ覚えます。
それは逆に瑠璃子にもしほに対しても不誠実さを感じるのですが。

破綻があるわけでなく、修羅場があるわけでもなく、淡々と結末を迎えます。
ま、いまどき修羅場シーンを望む人もいないでしょうけど(^^;)

それが却って、主人公二人の哀しさのようなものを感じました。穏やかな部屋に時間を停めた
ように過ごす二人には決して埋めることのできない深い溝があるように思えたのです。

なんだかんだいっても、流れるような文章とストーリイ展開は、江國さんならでは、と思いました。


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