柴崎友香さん「ショートカット」 [本☆☆]
さらっと読めてしまい、読後感が爽快なのが柴崎さんの作品の特徴だと思います。
表題作を含め4つの短編からなっています。
テーマは「距離」ですかね。物理的な距離、心の距離。
シンプルなタイトル、文章、会話というのが読んでいて心地いいです。柴崎さん特有のやわらかい関西弁(大阪弁?)も読んでいるはずなのに耳で聞いているように感じるほどすんなりと頭に入ってくる。これってすごいことだと思います。
お気に入りは表題作の「ショートカット」と「ポラロイド」です。
「ショートカット」では、想いさえあれば距離なんて簡単に越えられる。合コンの席で聞いた「大阪から東京の表参道までワープした」という酔っ払いのたわ言とも取れるような話から主人公が逢いたい人への想いを膨らませます。ただ、それをショートカットと呼んでいいのかどうか、タイトルとして相応しいのかは疑問が残りました。
「ポラロイド」は写真家の卵の話。デジタルカメラではない、組み立て式のポラロイドカメラでの味わいのある写真というものに惹かれました。また、ここにあるものを切り取れるのはカメラではなくて私だ、というくだりが印象に残りました。
ただ、さらっとしすぎていて、物足りなさも感じました。もうちょっと内面の深掘りがあってもいいのかな、と思いました。
それが今風なのかもしれませんが、人間関係がなんだか希薄なような気もしました。夜遊びやクラブ、ライブ、合コンに連れそう仲間たちとの何気ない日々を切り取るように描いている中に軽妙な会話や印象的な風景の描写があるだけに心に残るなにかがほしいと思いました。
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