伊坂幸太郎さん「チルドレン」 [本☆☆☆]
伊坂さんの短編集を読むのは初めてですが、長編短編関わらず面白いです。
連作短編という形で5つの物語が入っています。陣内というエキセントリックで型破りで首尾一貫していなくてロックな生き方を実践する青年を中心に、彼の友人や同僚による一人称で事件や謎が語られます。語られる時代もばらばらなのですが、作品間に仕込まれた伏線やキーワードや出来事がなんの違和感もなく繋がるところは長編も短編も関係なく伊坂さんらしさを感じられました。
ウィットに富んだ会話、思わずニヤリとしてしまう独白、音楽や映画といったサブカルチャーがてんこ盛りになっていて、読んでいて楽しいのも変わりません。
何気ない日常の謎でありながらも意表をつかれる結末であったり、筋道立った推理であったり、ミステリとしても楽しめました。
また、父子の関係を(多少乱暴ながらも)扱っていて、これは今までになかったように思えました。
これだけ詰め込んでいても詰め込みすぎとは感じませんでした。なぜだろう。
この作品では場所をはっきりとは書いていないのですが、恐らくは今までの作品同様に仙台を舞台にしているのだと思います。ここまで仙台にこだわる理由はわからないのですが、この大都市を箱庭に見立てていつか全ての作品と登場人物たちが繋がりあってしまうという壮大な意図があるんじゃないかと思ってしまいました。もちろん、妄想でしかないのですが。
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