伊坂幸太郎さん「陽気なギャングが地球を回す」 [本☆☆☆]
相変らずの伊坂節とでもいうのでしょうか。片肘張らずに楽しく読めました。
読む順番が発行順でないのですが、今作品は仙台を離れ、横浜が舞台です。まあ、横浜ならではという風景はないんですが。
とにかくテンポがいいです。ひょんなことから知り合い、銀行強盗を繰り返すことになった4人の男女。「ロマンはどこだ」って、今の世の中にそんなものが転がってるとは思えない、と天邪鬼は思ってしまうのですが。今回も華麗に素早く首尾よく銀行強盗成功、と思いきや逃走途中に現金輸送車強奪犯と出くわして車と盗んだ金を奪われてしまいます。さてどうする。。。
冷静沈着で嘘を見破ることの出来る成瀬、演説の達人というよりは口から先に生まれてきたような響野、天才的スリの久遠、精確無比な体内時計を持つ雪子の4人が主役です。それぞれが個性的で、それでいて成瀬を中心に一致団結しています。彼らの一人が欠けても銀行強盗は成り立たないように思えます。なかでも狂言回しとでもいうべき響野は伊坂さんの作品では欠かせないタイプのキャラですね。響野の妻の祥子や雪子の息子の慎一もいい味を出していると思います。
ただ、今回は展開の先が読めてしまいました。伏線や小道具も効果的に使われてはいるんですが、そこから筋道が見えてしまう。それで「ああ、やっぱりね」とはならずにストーリイを楽しめるので本読みとしては問題ないんですが、ミステリという点ではどうかな、と。
あと、全体的に「なんのために?」という疑問がずっとちらついていました。まさかロマンのためじゃないよね…?
そうはいっても、軽妙な会話やたたみかけるようなテンポなど楽しくさくっと読めますので伊坂作品はやめられないです…。
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