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米村圭伍さん「真田手毬唄」 [本☆☆☆]

真田手毬唄 (新潮文庫 よ 26-8)

真田手毬唄 (新潮文庫 よ 26-8)

  • 作者: 米村 圭伍
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2007/12
  • メディア: 文庫

米村圭吾さんの作品は初めて読みましたが、とても面白かったです。
伝奇時代小説なんですが、山田風太郎さんをはじめとする作家たちのおどろおどろしさとは違う、のほほんとした語り口と滑稽な登場人物たちのやりとりが楽しくてすらすら読めました。それでいて、真田忍び、黒脛巾組(くろはばきぐみ)、お庭番(公儀隠密)たちの繰り出す忍術や争闘シーンはしっかりと迫力がありました。
それでいて、次から次へと繰り出されるどんでん返しと明かされる真相とがしっかりとミステリ色を作っています。タイトルだけで読んでみたのですが、堪能しました。

豊臣家が滅亡した大阪夏の陣から物語は始まります。大阪方の侍大将(足軽ですね)の勇魚(いさな)大五郎は落武者狩りから逃れながらも、子供たちが唄うおかしな手毬唄を耳にします。
♪花のようなる秀頼さまを、鬼のようなる真田が連れて、のきものいたり鹿児島へ♪
大阪城で自害したと伝えられる豊臣秀頼が真田大助(真田幸村の長男)の手引きで生き延びている。秀頼を慕う勇魚大五郎はせめてその姿を見届けようと後を追います。手毬唄を子供たちに教えていたお才という女性と、佐助という猿のような小男とともに。

その170年後、7代目真田大助という男が仙台に現れます。初代真田大助は落ち延びた先の鹿児島で秀頼と離れ離れになってしまい、秀頼を探して代々諸国を旅していたのです。そして、山奥の砦で7代目豊臣秀頼と再会します。秀頼は大阪方の落武者たちと砦を築いて暮らしていました。しかし、その砦には7代目真田大助を称する老人がいました。処刑されそうになった男は本当の名前を告げます。7代目勇魚大五郎だと。そして7代目勇魚大五郎は砦に受け入れられます。
翌日、勇魚大五郎は秀頼に砦を案内すると言われついていくと、秀頼は砦を抜け出してしまいます。そのまま秀頼は江戸に向かうと言い出してしまいます。勇魚大五郎は止めることもできないままに秀頼に付き添うことになり、江戸へ向かうことになります。

源義経や織田信長、明智光秀に西郷隆盛と「実は死んでいなかった」という英雄生存伝説は多くあります。豊臣秀頼もその一人だそうです。それを170年後としたところにこの小説の面白さがあると思います。豊臣秀吉の埋蔵金伝説も絡んで、仙台伊達家や老中松平定信たちの思惑が物語に奥行きをもたせています。ただのチャンバラありのエンターテイメント小説に留まらずに、現代への風刺(「経世済民」という言葉に集約されます)を持った深みのある小説だと思いました。

個人的には、できればもっと佐助の活躍を見たかったです。そこが残念。


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