横山秀夫さん「半落ち」 [本☆☆]
流れるような展開ですらすらと読めました。構成がいいんでしょうね。細かいところが気になるのですが、流してもいいかと思わせられます。
ただ、終盤はちょっと説明不足だったような気がします。
W県警本部の梶警部が妻を殺したと出頭します。アルツハイマー病を患い、骨髄性白血病で亡くなった息子の命日を忘れてしまった妻に懇願されて殺したという供述に問題はないのですが、殺害から出頭までの2日間のことについては梶は口を閉ざします。しかし捜査の結果、新宿歌舞伎町に行っていたということが明らかになり、警察官が家族殺害後に日本有数の歓楽街にいたことに危機感を持った県警上層部が供述の捏造にかかります。
しかし、梶を引見した取調官や検察官などは歌舞伎町行きが歓楽目的でないことを感じ、空白の2日間に迫ろうとしますが梶は黙秘を貫きます。。。
県警本部捜査1課の志木警視、佐瀬検事、新聞記者の中尾、弁護士の植村、裁判官の藤林、刑務官の古賀とリレーのように年齢も立場も違う男たちが信念と思惑の間を揺れ動きながら空白の2日間を追います。
また、彼らの所属する組織の面子と保身(特にキャリア官僚の自己保身-ステレオタイプととれなくもないですが-)が重なり合い、物語の進行に一役買っています。これに関しては、志木警視のセリフが印象的でした。
「空白の2日間」を追ってはいるのですが、ミステリとしてはどうかなと思います。けれども人間ドラマとして読み応えがあります。
アルツハイマー病というのも人ごとではない、と思いました。もし自分がそうなったら…。
…この作品で直木賞候補となり、いざこざがあったようです。ここから先はネタバレを含みます。
http://www5a.biglobe.ne.jp/~katsuaki/sesou49.htm
↑に書かれていることが客観性があるかどうかはともかくとして、林真理子氏の言動には本好きとして腹が立ちます。氏の作品は幸い(?)読んだことがないのですが、正直「何様?」と思いました。むしろ、北方謙三氏のコメントに大人の対応を見たような気がします。
横山さんが以後の直木賞決別宣言したのもむべなるかな。
(出版社の対応は、まあこんなものでしょう。腰が引けてるという意見もありますが、マーケティング的には’売れる’作家であるわけだし)
で、事実誤認に対する謝罪はあったんでしょうかね。どうでもいいけど。
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