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恩田陸さん「エンド・ゲーム」 [本☆☆☆]


エンド・ゲーム―常野物語 (集英社文庫)

エンド・ゲーム―常野物語 (集英社文庫)

  • 作者: 恩田 陸
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2009/05/20
  • メディア: 文庫



常野物語第3弾です。これまでのどこか牧歌的な作品からより緊張感のある物語となっています。
「あれ」「裏返す」「つつむ」といった抽象的な表現が掴みづらいのですが、物語が進むにつれて感覚として掴めるようになりました。この本を読むにはそこにたどり着けるかどうかが鍵ではないかと思います。

拝島瑛子・時子の親子は毎日を怯えて暮らしていました。彼女たちには異物である「あれ」が見え、「あれ」を「裏返す」ことで生き延びてきたのです。強い力を持つ夫(父)は十数年前に謎の失踪をし、キャリアウーマンとして瑛子が家計を支えてきました。
12月のある日、瑛子は研修先で倒れます。外傷もなく脳機能も問題が見られないはずなのに、瑛子は眠り続けます。途方に暮れた時子は父母が絶縁していた一族に助けを求めます。現れたのは「洗濯屋」を名乗る火浦という男でした。
火浦は時子に告げます。父が「つつまれて」いること。「つつむ」だけでは問題の根本的解決にならないこと。「洗濯」することで初めて心休まる生活が送れるようになること。瑛子を眠りから覚ますことができること。その上で火浦は時子に協力を求め、時子はそれを受け入れます。

サスペンスというにはドキドキ感が足りない、ホラーというにはワクワク感が足りないものの、謎と嘘と罠が重ね塗りされて、幻想や回想が挿し込まれてなにが真実なのかどれがフェイクなのかわからなくなります。ほとんど流されるままなのですが、それもまた楽し、ということで。

ただ、常野一族最強を誇るはずの拝島一家(特に時子)がその力を存分に発揮するシーンが見られなかったのが残念です。
また、恩田さんの作品によくあることなのですが、終盤の展開が謎のままで、それを引きずったまま終結してしまうのも残念でした。

常野物語も新しいステージに移りつつあるのかな、という感想を持ちました。それだけに次回作が楽しみです。

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