三崎亜紀さん「失われた町」 [本☆☆☆]
理不尽さをテーマとする(と思う)作品を作り続けている三崎さんの長編小説です。集中して読めるまとまった時間があれば作品世界に浸り込めるのですが、隙間時間で読むにはオン/オフの切り替えが大変でした。
でも十分面白いことは間違いないです。
30年毎に町が消滅する事態に立ち向かう人々を描いています。
ある日、町が境界線をはっきりと住民たちを消滅させます。
家族や恋人を失った人たちは嘆き悲しみますが、町の'意識'はそんな人たちをも取り込んでしまうため、国家機関である管理局によって情報統制がされています。そのため、人々は悲しむことを禁じられるどころか町名が書かれた写真や書籍などの記録を回収されてしまいます。また、町に関わっていた人は"汚染"されたとみなされて、周囲から精神的にも物理的にも距離を置かれてしまいます。
「月ヶ瀬」という町を中心に30年前に消滅した「倉辻」と、30年後に消滅しようしている町。この60年という時間軸の中で町の消滅に関わった人々のエピソードをばらばらに描いていきます。
次第に登場人物の相関関係や消滅への対処法が明らかになっていく流れはパズルがぱちりぱちりと嵌っていくのを見るようで読んでいて快感を覚えます。
町の'意志'や「検索士」「分離」「消滅順化」「消滅耐性」「感情抑制」などSF的な事象やアイテムはとっつきにくい人がいるかもしれませんが、想像力を働かせて物語に移入できたら魅力的な世界に感じられると思います。
2010-01-23 23:21
nice!(0)
コメント(0)
トラックバック(0)
コメント 0