北川歩実さん「長く冷たい眠り」 [本☆☆]
サイエンスミステリの短編集です。「氷の籠」「利口な猿」「闇の中へ」「追う女」「素顔に戻る朝」「凍りついた記憶」「長く冷たい眠り」
全て冷凍睡眠をテーマにした作品になっています。テーマは共通ですが、それぞれ趣向を凝らしているので読み飽きるということはありません。
冷凍睡眠は基本的技術は確立されているものの、解凍技術が確立されていないという最大のネックが物語のベースにあります。ならば末期癌や難病を抱えた患者を冷凍させてしまって、「とりあえず」解凍技術が確立されるまで待とうという見切り発車的な発想で物語は進みます。もちろん今の法律では人間を冷凍するのは殺人になってしまうため、極秘裏に行われるという設定です。
それでも生きていたいという人間心理によって振り回される人々が描かれます。
1編が短いので読みやすいのですが、北川さん得意の二転三転する結末が活きないという背反が残念でした。
また、ストーリイがどうしても同じような展開になってしまうので印象に残る作品がなかったです。
むしろ連作短編にして最後の最後で巨悪が浮かび上がるとか、大ドンデン返しがあるとか趣向を凝らしてもらったら面白かったかもしれません。
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