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北川歩実さん「金のゆりかご」 [本☆☆☆]


金のゆりかご (集英社文庫)

金のゆりかご (集英社文庫)

  • 作者: 北川 歩実
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2001/11
  • メディア: 文庫



本の厚みと普通より小さい文字にちょっと躊躇しましたが、読み始めると止まりませんでした。面白いです。

29歳の野上は、かつて天才少年とマスコミに取り上げられたこともありましたが、やがて能力の限界を露呈し、大学受験も失敗してしまいます。アルバイトをしながら今はタクシードライバーをしています。
そんな野上にGCS幼児教育センターから幹部候補生として入社の誘いがかかります。GSCの創始者・近松吾郎の愛人の子供でもあり、かつて野上もGCSの「金のゆりかご」という幼児早期教育システムで育てられ、やがて見捨てられた経緯から、その待遇に不審を覚えつつも入社します。
入社した野上はある噂を耳にします。9年前、センターに通う4人の子供たちが錯乱状態に陥ったということ。しかし子供たちは後遺症もなく成長し、うち2人はかつての野上のように天才少年としてメディアに登場しています。
やがて事件の真相を追うフリージャーナリストが死体で見つかり、子供の母親・梨佳が失踪します。
噂は真実か、梨佳が真犯人なのか。。。

早期幼児教育の実態は知りませんが、作者はサイエンス・ミステリを得意として今まで読んだ従来の作品でも決して誇張ではない現実を描いているようなので、実態に近いのでしょう。

脳というハードウェア機能を向上させるシステムで天才を作り出すことが可能かどうか(脳の機能そのものが完全に解明されたわけではないので)はともかく、この「取り組み」に様々な人がそれぞれの思惑によって関わり、物語を複雑にしています。
ただ、それら登場人物の掘り下げが十分でないためか、彼らの役回りが曖昧で中途半端に終わっていることが多くて残念でした。
また、主題が変転しているような気がして読後感がすっきりしませんでした。

そして終盤はこれまた北川さん得意のどんでん返しのオンパレード(暴風雨並み)に振り回されつつ、どうにかついていくものの、最後の最後で「そう来るか」とうならされるオチ。やられました。。。

なんといっても近松吾郎の狂気につきます。一言もしゃべらないのに、物語が進むにつれて存在感が増してくる。
長いですが、読みやすいですし、流れもいい。十分楽しめると思います。

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