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坂木司さん「ワーキング・ホリデー」 [本☆☆☆]


ワーキング・ホリデー (文春文庫)

ワーキング・ホリデー (文春文庫)

  • 作者: 坂木 司
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2010/01/08
  • メディア: 文庫



不覚にもラストで涙してしまいました。
坂木さんの小説はどんな事件であっても読後感が温かいです。作者の人柄なんでしょうか。

本作は『切れない糸』(http://tomo-all.blog.so-net.ne.jp/2009-08-20)と同じ、「犬も歩けば棒にあたる」系のミステリです。「宛先人不明」「火気厳禁」「こわれ物注意」「代金引換」「天地無用」という、並べてみただけじゃ「なにかの用語?」と思える短編のタイトル。

ホストクラブで働く沖田大和は元ヤンキーです。そんな大和の前に小学5年生の男の子が現れます。そして大和に向かって一言「初めまして、お父さん」。
男の子は神保進、母親の由紀子から死んだはずの父親のことを聞かされ、父に会うため夏休みに家出してきたのでした。
ある日、大和は客とトラブルを起こし、ホストクラブをクビになります。ホストクラブのオーナーのジャスミン(オカマ!)は大和に新しい仕事を斡旋します。それは「ハチさん便」(別名「ハニービー・エクスプレス」)こと宅配便の仕事でした。
かくして大和と進の夏だけの生活が始まります。

短気で正義感に強く情に厚い大和と、何事にもマメで家事のプロの進(学校でのあだ名は「お母さん」!)という組み合わせはどっちが大人かわからない。これがまた面白いです。
初めはぎこちなかった二人がホストクラブのオーナーにして青年実業家(?)のジャスミンや、ナンバーワンホストの雪夜、常連客のナナ、ハニービー・エクスプレスの上司や仲間たちなどに囲まれて、支えられて次第に親子らしくなっていく様子が描かれてます。

トラックを運転できると喜んでいた大和にあてがわれた愛車は街角でよく見かける「エコロジーでエコノミーな」アレです。炎天下や冬空、雨だと大変だよなぁ。大和の口癖「絶対殺す」が妙にリアルに聞こえます。お中元時期に、荷物の仕分けで「タオル来い」「海苔来い」と念じているとビールセットが来たりと、仕事現場のリアルさも伝わってきます。
ただ、この「マシン」のお陰でお客さんとの交流も生まれて、次第に大和にも愛着がわいてきます。やがて愛車で住宅地を爆走します。しかも、炎柄のステッカーや「ハチさん参上」の幟に走るところが笑えます。今時そんなヤンキーいないって。

お互いに存在すら知らなかった親子が夏休みを通して絆を強めていく過程に特別なことはいりませんね。最後は泣けてきました。最近、涙腺弱いかも。

次は冬休みですね。続編が楽しみです。

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