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道尾秀介さん「ソロモンの犬」 [本☆☆]


ソロモンの犬 (文春文庫)

ソロモンの犬 (文春文庫)

  • 作者: 道尾 秀介
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2010/03
  • メディア: 文庫



それまで読んだ道尾さんの本が面白かったので、期待が高すぎたかもしれません。青春ミステリは楽しく論理的矛盾や展開や着地点に無理はないんですが、ミステリとしてどこか納得いかない感覚が残りました。

突然の雨に降られた大学生の秋内静は、雨宿りできる場所を求めて寂れた喫茶店に入ります。やがて後を追うように同級生の友江京也、羽住智佳、巻坂ひろ子が入ってきます。テーブルに向かい合った彼らに秋内は話します。
「一度、ちゃんと話し合うべきなのかもしれない」
「この中に、人殺しがいるのかいないのか」
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2週間前、彼らの小さな友人、小学生の陽介が事故死します。飼い犬のオービーが突然車道に飛び出して、陽介が引っ張られたためでした。バイト中の秋内は事故の瞬間を目撃していました。京也、智佳、ひろ子は車道に面したレストランから出てきたところでした。
助教授で、夫と離婚して一人息子の陽介と暮らしていた鏡子は失意のあまり自殺をしてしまいます。その場に居合わせた京也は秋内に「やっちまったよ」という電話を残します。
秋内はなぜオービーが突然車道に飛び出したのか疑問をいだき、真相を追及しようとします。

喫茶店での会話と、学生生活の中での秋内の探索が交互に(というか、喫茶店での場面がイントロダクションになって)描かれます。この2つの流れが最後にピタッとはまるところはさすがだなーと思いました。

智佳に想いを寄せながらも上がり症な秋内がいいキャラを出しています。智佳と「話したいことメモ」を作ったり、自意識過剰だったりと空回りしているようすは面白く、でも共感できてしまう部分もあります。
イケメンでマイペースで変わり者の京也も鍵を握る人物です。終盤で思いがけない一面を見せたのは正直意外でした。
それに比べると智佳、ひろ子はあまり印象に残りませんでした。秋内、京也に比べると色が薄かったからかもしれません。

動物生態学を取り込んでいて興味深くはあったのですが、謎解きのシーンは期待はずれでした。確かに撒餌は撒かれていましたが…。期待が高かった分だけ肩透かしをくらった感じです。それに、鏡子の自殺はなんだったんだ。喫茶店のマスターにも無理があるように思えたんですが。
秋内に動物生態学を教える大学助教授の間宮が強烈な存在感をかもし出しています。
ただ、このご時勢に学生に教員の住所を教えるだろうか?

とはいえ、青春ものとして読むなら楽しいです。秋内の智佳への想い、京也とひろ子の距離、秋内と京也の友情など、今までの道尾さんの作品には見られなかったもので、楽しめました。

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